▲グラフィック=ペク・ヒョンソン
米国は9日、通貨危機に見舞われているアルゼンチン政府に200億ドル規模の通貨スワップを提供すると表明した。通貨スワップとは両国が相互に自国通貨をあらかじめ定めた為替レートで差し入れ、外貨を融通できるようにする契約を指す。「南米のトランプ」と呼ばれトランプ米大統領とも近いアルゼンチンのミレイ大統領が率いる右派政府が政治的危機に直面すると、その救済に米国が乗り出した格好だ。一方、トランプ政権は同盟国..
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▲グラフィック=ペク・ヒョンソン
米国は9日、通貨危機に見舞われているアルゼンチン政府に200億ドル規模の通貨スワップを提供すると表明した。通貨スワップとは両国が相互に自国通貨をあらかじめ定めた為替レートで差し入れ、外貨を融通できるようにする契約を指す。「南米のトランプ」と呼ばれトランプ米大統領とも近いアルゼンチンのミレイ大統領が率いる右派政府が政治的危機に直面すると、その救済に米国が乗り出した格好だ。一方、トランプ政権は同盟国である韓国との通貨スワップには消極的だ。関税交渉が難航する中で韓国政府は無制限の通貨スワップを要求し「十分条件ではなく必要条件」だと言ったが、米国は特に立場を明らかにしていない。
【表】ドル通貨スワップ「無制限」日本と「なし」韓国の経済格差
■トランプとミレイの「特別な関係」
ベセント米財務長官はワシントンを訪問したアルゼンチンのカプト経済相と9日まで4日間にわたり会談を行い、ソーシャルメディアに「トランプ(政権)の米国優先主義の経済リーダーシップは公正な貿易、対米投資を歓迎する同盟を強化することに専念している」とし、「アルゼンチンは深刻な流動性不足に直面しており、それを速やかに解決できる国は米国しかない」と述べた。その上で、アルゼンチンとの200億ドル規模の通貨スワップを確定させ、アルゼンチンペソを直接買い入れたと説明した。米国が相手国の通貨安定に向け、国際通貨基金(IMF)などと連携することなく、「ペソ直接買い入れ」のような一方的支援を行うのは極めて異例だ。発表を受け、アルゼンチン国債価格は上昇し、ペソも0.6%反発。1週間前の水準に回復した。
トランプ政権による全面的な支援の背景には、「MAGA(マガ=米国を再び偉大に)」を唱えるトランプ陣営に馴染み深いミレイ大統領が率いる右派政府が経済危機で崩壊しかねないという不安感があった。2023年に就任したミレイ大統領はは徹底した金融引き締め政策など経済改革にかじを切り、成果を上げた部分もあるが、人為的な為替防衛が通貨危機を悪化させ、最近経済・政治全般が揺らいでいる。また、今年4月にIMFから200億ドルの追加支援を受けるなど、依然として債務に苦しんでいる。先月7日、全人口の約40%が住むブエノスアイレス州の州議選でポピュリズム傾向の野党連合に敗北し、今月26日に予定される中間選挙でも敗色が濃厚となっている。ブルームバーグは「トランプ大統領とべセント財務長官は政治的同盟関係にあるミレイ大統領が中間選挙で勝利することを助ける一方、ミレイ大統領の左派ライバルが権力を取り戻すことを恐れる市場を落ち着かせることが目標だ」と分析した。
保守陣営内でも今回の措置を巡り税金を外国政府支援に使うことは「米国優先主義」と相容れないとの指摘が出ているが、トランプ大統領のミレイ大統領に対するは信頼は揺るがない。先月23日に国連総会の場で首脳会談を行ったのに続き、IMF・世界銀行の年次総会中の今月14日にも首脳会談を行う予定だ。ミレイ大統領は昨年、トランプ氏が大統領選で勝利すると、外国首脳としては真っ先に米フロリダ州に飛び、トランプ氏と会った。ミレイ大統領は9日、Xでトランプ大統領とベセント財務長官に謝意を表し、「我々は最も近い同盟として、経済的自由と繁栄の西半球を共に築いていく」と述べた。
■個別国支援のための通貨スワップは異例
米連邦準備理事会(FRB)が常設の通貨スワップ協定を結んでいるのは、カナダ、英国、日本、スイス、欧州連合(EU)に限られる。いずれも基軸通貨に分類される通貨を使っている国々だ。
基軸通貨国を除き、米国が個別国を支援するために通貨スワップという手段を用いるのは一種の「優遇措置」だ。米国にとっては、通貨スワップは相手国の通貨を担保にドルを貸すことであり、支援国が危機から脱することができず、デフォルト(債務不履行)を宣言すれば、大きな損害を受ける恐れがあるためだ。
世界的な金融危機といった例外的な状況では、米国に被害が及ぶことを防ぐために、一時的に通貨スワップ協定を結ぶこともある。FRBは2008年の金融危機と2020年のコロナ危機の当時、韓国など一部の国々と一時的に通貨スワップを結んだが、現在は終了している。コロナの際にはオーストラリア、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランドの9カ国とそれぞれ300億~600億ドル規模の通貨スワップを結んだ。韓国政府は3500億ドルの対米投資を約束した関税交渉に関連し、見返りとしての米国に通貨スワップを要求しているが、米国は特に反応を示していない。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員、宣政敏(ソン・ジョンミン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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