現在はないポストだが、バイデン政権当時のホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)に「戦略広報調整官」というポストがあった。ウクライナ戦争など外交・安保上の懸案が急増していた時期に、専門性が求められる複雑な事案はNSCの調整官がマイクを握った。ホワイトハウスの報道官は米国国内の懸案に対応するだけで手一杯だからだ。このポストは、海軍提督出身で国務省報道官や国防総省の広報経験もあるジョン・カービー氏..
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現在はないポストだが、バイデン政権当時のホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)に「戦略広報調整官」というポストがあった。ウクライナ戦争など外交・安保上の懸案が急増していた時期に、専門性が求められる複雑な事案はNSCの調整官がマイクを握った。ホワイトハウスの報道官は米国国内の懸案に対応するだけで手一杯だからだ。このポストは、海軍提督出身で国務省報道官や国防総省の広報経験もあるジョン・カービー氏が2年半にわたって務めていた。退任直前に海外メディア向けに開いた記者会見で、カービー氏が世界各地のさまざまな懸案について忌憚(きたん)なく語る姿が印象的だった。韓国に関する質問に、「ちょっと調べてみる」と書類をめくる現在のホワイトハウス報道官とは明らかに違っていた。
【写真】「韓米関税交渉は合意文を書く必要がないほど順調」と言っていた姜由楨報道官
政府省庁の中で、報道官は孤独なポストだという。日々、メディアに発表するネタに頭を悩ませなければならない一方で、現場の実務者たちは業務内容を外部に明かすことを嫌がるからだ。このような傾向は、相手があって多数の機密を扱う外交・安保関連の省庁で顕著だ。大統領の報道官を経験したある人物は「話したくない、これはダメだ、というNSCの関係者を捕まえて、毎朝しつこく取材しなければならなかった」と吐露した。その逆も、もどかしいのは同じだった。安保室で働いていた元関係者たちは、ブリーフィングルームの雰囲気がたいてい国内政治に染まっているため、外交懸案の種類によってはメッセージが正確に発信されず残念だと話した。
韓米両国は今年7月、貿易に関して大枠で合意したはずだったが、3カ月が経過した今もこれを明文化できずにいる。そうでなくても同盟の未来が不確実になっているのに「合意文書が必要ないほどうまくいった会談」だという報道官の詭弁(きべん)、「合意には至ったが、米国が言い分を変えた」という政策室長の説明が、不安に油を注いだ。「あらゆる点で合意に至るまで、いかなることも合意したとはいえない」というのが外交の基本中の基本だが、この政府高官たちの口調にはためらいが感じられなかった。一方で国家安保室長による16日のブリーフィングを見ると、トランプ大統領の来韓に関連して「変更の可能性がある」「紹介するにはまだ早い」などと慎重な態度を取り続けている。百パーセント確実ではないことに対して保証書を書いて覆されれば、その責任を取らなければならないからだ。もどかしく見えるが、それが外交で使われる言葉だ。
韓国の交渉団が7月にトランプ大統領と面会した直後、大使館によるブリーフィングでは「至誠天に通ず(真心を持って事に当たれば好結果がもたらされる)」「李在明(イ・ジェミョン)大統領に早く会いたいと言っている」などと自画自賛の言葉が相次いだ。交渉の中核となった長官はラジオに出演し「現代自の会長が、感謝していると述べた」と発言したが、自動車に対する25%という関税爆弾は3カ月たってもそのままだ。関税交渉が難航すればするほど、雰囲気に浮かれた軽々しい言葉や国内向けに発した言葉がブーメランとなって返ってきて、この政権にダメージを与えている。相手国が存在する合意は、それが我々に明らかに有利であったとしても「51対49」ぐらいの感覚で説明するのが正しい。温度を下げ、国民の期待値が高くなり過ぎないよう調節しながら、より戦略的に伝える方法を考えるべきだ。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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