▲グラフィック=梁仁星(ヤン・インソン)
米国と中国の武力衝突を想定した台湾有事について日本の高市早苗首相が「(日本の)存立危機事態になり得る」との見方を示した。台湾を侵攻する中国人民解放軍に対し、日本の自衛隊が米軍と共に武力介入する事態もあり得るという意味で、日本の首相が台湾有事での武力行使可能性に公式の場で言及するのはこれが初めてだ。これに対して韓国政府は台湾有事について韓国軍はもちろん、在韓米軍の積極的な対応にも否定的だ。
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▲グラフィック=梁仁星(ヤン・インソン)
米国と中国の武力衝突を想定した台湾有事について日本の高市早苗首相が「(日本の)存立危機事態になり得る」との見方を示した。台湾を侵攻する中国人民解放軍に対し、日本の自衛隊が米軍と共に武力介入する事態もあり得るという意味で、日本の首相が台湾有事での武力行使可能性に公式の場で言及するのはこれが初めてだ。これに対して韓国政府は台湾有事について韓国軍はもちろん、在韓米軍の積極的な対応にも否定的だ。
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朝日新聞などが9日に報じた。それによると高市首相は7日に行われた衆議院予算委員会で台湾有事について問う質問に「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだと考える」と述べた。さらに「単に民間の船を並べて通りにくくすることは存立危機事態には当たらないと思うが、実際に戦争という状況の中での海上封鎖であり、ドローンも飛び、いろんな状況が起きた場合は別の見方ができる」との考えを示した。
■高市首相が前首相の考えと異なる「自衛隊による武力行使可能」を明言
「存立危機事態」とは日本が軍事攻撃を受ける「武力攻撃事態」とは異なる概念で、2015年に制定された日本の安全保障関連法で初めて明確になった。日本と密接な関係にある台湾が武力攻撃を受け、影響で日本領土や国民の生命にも明らかな脅威が迫った場合、日本政府は存立危機事態かどうかを判断し、集団的自衛権に基づき武力行使に乗り出す可能性が高まる。
高市首相の「台湾有事は日本の存立危機事態」発言は日本政府内で事前に調整されていなかったという。朝日新聞は高市首相の答弁について「従来の政府見解を踏み越えた」とした上で「外務省も首相個人の考えとしている」と伝えた。小泉進次郎防衛大臣は同日「いかなる事態が存立危機事態になるかは政府があらゆる情報を総合して判断する。首相の発言もそのような意味合いだ」と発言した。
日本政府は以前から「台湾が攻撃を受けた場合は存立危機事態になり得る」との判断を示してきたが、実際に明言することはなかった。現職の首相が中国を念頭に集団的自衛権行使の可能性に言及すれば外交面での影響が大きくなるからだ。安倍晋三元首相や麻生太郎元首相も退任後「台湾有事は日本の存立危機事態」という趣旨の発言はしてきたが、首相在任中は明確な考えを示すことはなかった。
そのため高市首相が今国会で非常に重要な発言をした背景には、その台湾支持の考え方以外にも明確な意図がありそうだ。日本の安全保障と経済の繁栄には台湾と中国の分離が絶対に必要と考える日本の保守派の考えを高市首相が政府の立場として明確にしたとみられる。
高市首相は首相就任前の会見で「台湾有事は日本有事であることは間違いない」「(台湾と)与那国島との距離はわずか110キロで、東京で言えば熱海市くらいの場所に他国の戦艦が展開することになる」と発言した。目前に迫る中国の台湾侵攻に日本が武力介入すべきとの考えは高市首相の持論だ。
台湾が中国から攻撃を受ければ日本の自衛隊は沖縄県に駐留する在日米軍と共に中国軍と直接対峙(たいじ)する。また中東から日本に輸入される原油の大部分は台湾周辺海域を通過するのはもちろん、海外貿易の半分以上がこのルートを通る。中国による台湾封鎖は日本経済の息の根を止めることに等しいというのが高市首相の認識だ。
さらに台湾有事に同盟国の積極的な介入を求める米国のトランプ政権の意向に合わせる意味合いもありそうだ。高市首相は実際に首相就任と同時にトランプ大統領が要求する防衛費増額に直ちに着手した。2027年をめどとしてきた防衛費のGDP(国内総生産)2%への増額は今年度中に達成するとし、それ以上の増額も推進している。さらに「次世代動力潜水艦の保有」も日本維新の会との連立政権合意書に明記されており、事実上の原子力潜水艦導入を推進している。ただし日本国内では高市首相の強硬路線が外交や軍事面での緊張の高まりを招くことへの懸念もある。議会で高市首相に質問した立憲民主党の岡田克也議員は「軽々しく存立危機事態と言うべきでない」と批判した。
日本とは逆に韓国政府は台湾有事への韓国軍の介入には否定的で、しかも在韓米軍の積極的な役割行使にも慎重な立場を示している。韓国軍や在韓米軍は韓半島に集中すべきで、韓国の同意なしに在韓米軍が台湾有事に介入し、韓国が米中対立に巻き込まれることはあってはならないと考えている。
韓国国防部(省に相当)の安圭伯(アン・ギュベク)長官は8日にKBS放送日曜診断に出演し「韓米相互防衛条約によると、在韓米軍は韓半島防衛がその主な目的だ。それは2国間の関係であり、第三国に介入する問題ではないと考えている」と発言した。李在明(イ・ジェミョン)大統領も今年8月に在韓米軍の戦略的柔軟性について「簡単には同意できない難しい問題だ」との考えを示した。
米国は韓国に対し、日本と同じく台湾問題への積極的な関与を望んでいる。米国のヘグセス国防長官(戦争省長官)は今月4日にソウルで韓米安全保障協議会に出席した後の会見で「われわれが地域の他の非常事態に対応できる柔軟性を高めることは間違いなく必要だ」と発言した。在韓米軍が台湾有事に参戦する可能性を明確にした発言と受け取られている。
東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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