▲写真=UTOIMAGE
現在世界には130隻の原子力潜水艦が存在する。内訳は米国66隻、ロシア31隻、中国12隻、英国10隻、フランス9隻、インド2隻だ。原子力潜水艦を分類すれば核武装潜水艦と原子力推進潜水艦に区分できる。核武装潜水艦は敵国の先制攻撃に備えて報復用の核兵器を持ち、通常は深海に隠れている。いわば核兵器による報復能力の維持がその目的だ。このように海底に潜み核兵器で敵国の攻撃に備える大型の原子力潜水艦を弾道ミ..
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▲写真=UTOIMAGE
現在世界には130隻の原子力潜水艦が存在する。内訳は米国66隻、ロシア31隻、中国12隻、英国10隻、フランス9隻、インド2隻だ。原子力潜水艦を分類すれば核武装潜水艦と原子力推進潜水艦に区分できる。核武装潜水艦は敵国の先制攻撃に備えて報復用の核兵器を持ち、通常は深海に隠れている。いわば核兵器による報復能力の維持がその目的だ。このように海底に潜み核兵器で敵国の攻撃に備える大型の原子力潜水艦を弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)とも呼ぶ。
【写真】釜山港に入港する米海軍ロサンゼルス級原子力潜水艦「コロンビア(SSN-771)」
これとは別に核兵器を持たず敵の潜水艦や海軍艦艇を監視・追跡・破壊する目的の原子力潜水艦も存在する。これは攻撃型原子力潜水艦(SSN)と呼ばれる。価格はディーゼル潜水艦の数倍と高価だが、原子力エンジンの騒音が大きいという弱点がある。しかし潜行時のスピードはディーゼル潜水艦の2倍に達し、また数カ月にわたり潜行が可能で遠洋での作戦に非常に適している。米国が2021年にAUKUSを結成しオーストラリアへの提供を決めた原子力潜水艦はこのタイプで、韓国が保有を目指すのもこれだ。
先日の韓米首脳会談を受け韓国の原子力潜水艦保有問題が国内で大きな注目を集めている。潜水艦に使用する核燃料の提供を米国に要請したところ、トランプ大統領は米国での建造を提案した。米国が原則的に同意したことで計画は一気に進む可能性もあるが、祝杯を挙げるのはまだ早く、乗り越えるべきハードルは数多く残っている。まず韓国の原子力潜水艦プロジェクトが最終的に実現するまで米国大統領は少なくとも2-3回交代するため、これに伴って予想されるハードルは少なくとも四つある。
一つ目は米国の核拡散防止政策だ。地球上の全ての原子力発電所と原子炉は毎年少なくとも1-12回IAEA(国際原子力機関)の査察を受け、24時間365日IAEAが設置した監視カメラでリアルタイムの監視を受けている。しかし潜水艦に搭載された原子炉は軍事用のためIAEAの監視対象ではなく、また物理的にも監視は不可能だ。現在も未来も米国政府や議会はこの隙を突いた韓国の核武装を警戒しているため、韓国の原子力潜水艦保有に反対する可能性は十分考えられる。まずはこの反対に備えなければならない。
二つ目は米国の軍事技術保護政策だ。原子力潜水艦に使用される原子炉は軍事兵器の特性上、原子力潜水艦やSMR(小型モジュール原子炉)と稼働方式が全く異なる。通常の原子力潜水艦は5%未満の低濃縮ウランで動くが、米国のSSBNは90%以上の核兵器用ウランを使用しており、ロシアは20-50%の高濃縮ウランを使用している。また通常の原子力潜水艦は核燃料を随時交換するが、潜水艦用核燃料は本来潜水艦の耐用年数まで少なくとも20年以上は使用できる。米国のSSBN技術は先端軍事技術のため、1950年代に英国に提供された以外に海外への提供はなく、米国はオーストラリアへの技術提供にも否定的と一部で報じられている。韓国の原子力潜水艦も中国や北朝鮮などに技術流出する可能性が重要な検討事項になるだろう。
三つ目は用途上の制約だ。韓国が原子力潜水艦という高価な兵器を保有するのであれば、その用途を明確にしなければならない。長距離航行が可能な原子力潜水艦を韓国が南シナ海や台湾海峡に展開して中国けん制に加わるとか、中国近海で中国海軍艦艇を監視するのであれば間違いなく中国と激しく対立するだろう。ただし中国の顔色をうかがい原子力潜水艦を韓半島周辺だけにとどめ、北朝鮮が保有する70隻以上の潜水艦の監視しか行わないのであれば、これはあまりに非効率的で経済性にも欠ける。それならむしろ1カ月の航行が可能な先端AIP(非大気依存推進)ディーゼル潜水艦を複数建造し、韓半島周辺海域の各地に監視用の無人潜水艇と水中センサーを配備する方がはるかに効率的だろう。
四つ目は今後の韓米同盟の不確実性だ。米国が英国に続きオーストラリアに原子力潜水艦技術を提供する背景には、オーストラリアが中国の海洋進出に共に対抗する重要な同盟国との認識があるからだ。米国は韓国の原子力潜水艦保有を検討する際にも同じ観点から検討するのは間違いない。そのため原子力潜水艦建造で両国の具体的な合意を引き出すため、あるいは今後10年以上にわたり韓国の原子力潜水艦保有を米国の将来の大統領たちにずっと支持してもらうため、さらには完成後に米国によるメンテナンス支援の保証を取り付けるためにも韓米両国の固い結束と信頼は絶対的な条件になるだろう。
李容濬(イ・ヨンジュン)世宗研究所理事長・元韓国外交部(省に相当)北朝鮮核大使
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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