▲映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の韓国版ポスター。/朝鮮日報DB
日本のアニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、韓国で今年公開された全ての映画の中で興行成績1位になった。同作は11月22日、通算観客動員数563万8000人を突破し、韓国映画『ゾンビになってしまった私の娘』を抜いてトップに立った。韓国でアニメ映画が年間興行成績1位になるのは初めてのことだ。
【写真】「鬼滅の刃」グッズを買うために早朝から集まったファンの行列
「鬼滅の..
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▲映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の韓国版ポスター。/朝鮮日報DB
日本のアニメーション映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、韓国で今年公開された全ての映画の中で興行成績1位になった。同作は11月22日、通算観客動員数563万8000人を突破し、韓国映画『ゾンビになってしまった私の娘』を抜いてトップに立った。韓国でアニメ映画が年間興行成績1位になるのは初めてのことだ。
【写真】「鬼滅の刃」グッズを買うために早朝から集まったファンの行列
「鬼滅の刃」は、大正時代の日本を舞台に少年剣士(剣士=韓国語でコムサ)たちの戦いを描いたストーリーだ。主人公の炭治郎は、人間を食べる鬼に家族を奪われ、生き残った妹も鬼になってしまう。妹を人間に戻すために、炭治郎は鬼を狩る組織「鬼殺隊」に入り、奮闘する。主人公が仲間たちと共に成長しながら巨大な悪に立ち向かうというストーリーは、日本の少年漫画の典型だ。
この作品の魅力に挙げられるのが、深みのあるキャラクターだ。登場する鬼たちは人間を食らう悪党ではあるが、それぞれがエピソードを抱えている。人間だった時代に味わった貧困や差別、家族を失った無念の思いは、鬼になってからの悪行の動機として作用する。加害者に生まれ変わった被害者のストーリーは、韓国のサスペンスやホラーでよく扱われる「恨(ハン=晴らせない無念の思い)」という感情とも似たものがある。主人公は鬼たちの気の毒な過去をふびんに思うが、審判を遅らせることはない。鬼たちが人間を食らったという事実は変わらないからだ。「悪行と断罪」は鬼滅の刃の根幹を成す重要なテーマなのだ。
主なファン層は20-30代だ。なぜ、20-30代は日本の剣士のストーリーに熱狂するのか。人は漫画や小説、映画といった仮想のストーリーを通じて、現実の中では充足されない欲求を満たそうとする傾向がある。勧善懲悪という言葉に圧縮される鬼滅の刃の教訓は、こうした点を鋭く突いている。罪を犯せば必ずその代償を支払うことになるというシンプルなメッセージは、今の時代を生きる若者たちに、日常では味わえないカタルシスを与えてくれる。罪を犯しても処罰されず、いいことをすればバカにされる時代だからだ。
韓国の検事(韓国語で「剣士」と同じコムサ)たちは、大庄洞一味(京畿道城南市大庄洞の土地開発を巡る背任事件の中心人物たち)の控訴を放棄したことで、犯罪者たちが数千億ウォン(約数百億円)に達する犯罪収益のほとんどを懐に収める道を開いてやった。大庄洞一味は、自分たちの財産の凍結解除を要求しているが、与党側は必死で被害額(追徴できなくなる額)を少なく見せかけ「民事訴訟で回収すればいい」と呑気なことを言っている。大韓民国では悪党たちは断罪されず、逆に政界の庇護を受けているのだ。これは大庄洞事件に限った問題だろうか。入試不正、開発不正で捜査を受けている政治家たちは、もう長いこと烈士あるいは崇高な被害者になりすましている。慰安婦被害者の女性たちをダシにして支援金を横領しても、難なく国会議員の任期を全うできる。一方で、正義と公正を求める若者たちは「能力主義にまみれた極右」という非難を浴びせられる。
政府・与党は一部の政治検事を問題視し、司法体系全体を揺るがしている。文在寅(ムン・ジェイン)政権が検察・警察間の捜査権の調整を強行して以降、資本市場法違反、電子金融取引法違反など主要な経済犯罪事件が一審で無罪になる確率が急上昇したが、この事実には目をつぶっているようだ。検察が立件した麻薬事犯も2020年の5974人から23年には8342人へと39.6%も増加した。詐欺犯と麻薬事犯が急増しているのに、捜査指揮の空白によって検察と警察は互いに責任を押し付け合っている。被害者たちは探偵の役割をしてくれる弁護士を探すなど自力で解決の道を探し始めている。
検察庁の廃止によって国民的な被害が大きくなるとの懸念が上がっても、政府・与党はその声に耳を貸そうともしない。陣営の論理という鬼は、常識を破壊して市民生活を食い荒らす。犯罪者が守られ、捜査と裁判を担当した判事・検事が侮辱されるという奇異な現象は現在も続いている。この国でまともな勧善懲悪が実現するのを望むのは欲張りなのか。大韓民国の明日のために「正義と常識の刃」を振りかざしてくれる検事はいったいどこにいるのだろうか。
イ・ドンス世代政治研究所代表
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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