▲イラスト=UTOIMAGE
タイ・カンボジア間の国境紛争が、単純な交戦にとどまらず空軍力まで動員した全面戦の様相へと激化しつつある。双方の兵士や民間人など13人が死亡する中、タイ空軍所属のF16戦闘機が12月9日(現地時間)、カンボジアの国境地域にあるカジノの建物を爆撃した。「バンコク・ポスト」や「タイPBS」など現地主要メディアは、軍当局の話を引用して「当該建物は、表向きはカジノの看板を掲げていたが、実際にはドローン作戦..
続き読む
▲イラスト=UTOIMAGE
タイ・カンボジア間の国境紛争が、単純な交戦にとどまらず空軍力まで動員した全面戦の様相へと激化しつつある。双方の兵士や民間人など13人が死亡する中、タイ空軍所属のF16戦闘機が12月9日(現地時間)、カンボジアの国境地域にあるカジノの建物を爆撃した。「バンコク・ポスト」や「タイPBS」など現地主要メディアは、軍当局の話を引用して「当該建物は、表向きはカジノの看板を掲げていたが、実際にはドローン作戦のコントロールセンターとして運用されていた」という主張を報じた。
【写真】タイ国軍が「カジノ団地」を爆撃している様子と火災が発生した建物
タイ国軍は、この「偽カジノ」の屋根にタイ側のドローンを無力化する電波かく乱のアンテナがあることを識別し、当該施設が軍事および犯罪目的に転用されていると判断して、施設の80%を壊滅させた―と発表した。タイは、このほかにもカンボジア領内に侵入し、武器の貯蔵庫として使用されてきたカジノも爆撃したと伝えられている。
タイ国軍の今回の攻撃は、国境地域に毒キノコのように広がる「犯罪団地」を狙った精密打撃作戦として実施された。東南アジア地域のオンライン詐欺組織を追跡している専門団体「サイバースカム・モニター(CyberScam Monitor)」は、X(旧ツイッター)を通して「タイ国軍が国境地帯のボイスフィッシング犯罪拠点を集中攻撃している」と伝えた。同団体はこれまで「過去12カ月間、タイ・カンボジア国境地域で詐欺犯罪拠点が急激に拡大した」とし、カンボジアのオスマック(O’Smach)などにある「カジノ団地」について、実際には拉致・監禁・強制労働が横行する犯罪の巣窟だと指摘してきた。
今回の事態はささいな銃撃戦から始まったが、民間施設が攻撃されたことで収拾がつかないほど拡大した。12月7日午後2時、タイのシーサケート県の国境地域でカンボジア軍がタイ国軍の哨所に向けて銃器による射撃を加え、タイの軍人2人が負傷したことで武力衝突が始まった。タイ国軍は直ちに対応射撃に乗り出したが、カンボジア側はロケットランチャー(RPG)まで動員し、8日未明には戦線を拡大してタイのブリ―ラム県の空港やスリン県プラサート郡の病院など民間施設を攻撃した。この過程でタイの軍人1人が死亡した。
タイ政府は、相手が強く出るなら受けて立つという「強対強」の対峙(たいじ)の中で、一切の妥協を拒否している。タイのアヌティン・チャーンウィラクン首相は8日に国家安全保障会議(NSC)を緊急招集した後、テレビ演説で「これ以上の交渉はない(No negotiations)」とくぎを刺した。アヌティン首相は「彼らが先に始めた。われわれはそれ相応の代償を払わせてやる」と、事実上の局地戦も辞さないという意志を鮮明にした。タイ陸軍報道官のウィンタイ・スバリ少将は「単純な威嚇射撃ではなく、殺傷の意図が確認された」とし「カンボジアのロケット基地と火力支援システムを壊滅させることが作戦の最終目標」と強調した。
逆に、守勢に追い込まれたカンボジアは、それとなく対話のジェスチャーを繰り出した。AP通信によると、カンボジアのフン・マネット首相の最側近である上級顧問のスオス・ヤラ氏は10日、「双方が同意しさえすればすぐに、1時間以内にもテーブルに着くことができる」として緊急会談を提案した。スオス・ヤラ上級顧問は「われわれは永遠に隣人として生きねばならない。これは、お前を殺して自分も死ぬというゲーム(Lose-lose game)」だと訴えたが、タイ外務省は「外部の仲裁は必要ない。カンボジアがまず真剣さを見せるべき」と一蹴した。事実上、米国のドナルド・トランプ大統領が誇っていた休戦合意が水泡に帰したことを意味する。
外交関係者の間では、今回の衝突を単なる領土紛争にとどまらない、米中派遣競争の代理戦という様相で分析している。米国が最近、対中けん制の観点から、代表的な親中の国であるカンボジアを懐柔しようと力を入れたことにより、米国の長年の友邦であるタイが疎外感を抱き、過剰対応しているというのだ。マルコ・ルビオ国務長官が10日、緊急声明を出して「即時の戦闘中止」を求めたが、トランプ大統領の「関税圧迫」カードすら通用しない状況で、米国の仲裁力が試されている―という分析が支配的だ。
アン・ジュンヒョン記者
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com