▲イラスト=UTOIMAGE
AI(人工知能)と人間が翻訳で対決した。ハングルで書かれた文学作品をそれぞれが英語に翻訳したのだ。果たしてどちらが勝ったのか。
韓国文化体育観光部(省に相当)傘下の韓国文学翻訳院が最近、欧米圏に輸出する予定のハングルの詩について翻訳比較テストを実施した。対象となった原文は朝鮮王朝時代の詩人、張維(チャン・ユ)の詩「一人のときは慎め」(慎独箴)だ。専門の翻訳家が英語に翻訳したバージョンとChatG..
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▲イラスト=UTOIMAGE
AI(人工知能)と人間が翻訳で対決した。ハングルで書かれた文学作品をそれぞれが英語に翻訳したのだ。果たしてどちらが勝ったのか。
韓国文化体育観光部(省に相当)傘下の韓国文学翻訳院が最近、欧米圏に輸出する予定のハングルの詩について翻訳比較テストを実施した。対象となった原文は朝鮮王朝時代の詩人、張維(チャン・ユ)の詩「一人のときは慎め」(慎独箴)だ。専門の翻訳家が英語に翻訳したバージョンとChatGPTが英語に翻訳したバージョンを、韓国の英文科教授16人が読んでブラインドテストを実施した。誰が翻訳したかについては明かさずに、ハングルの原文と2種類の英語の訳文を見せ、どちらの翻訳が優れているか尋ねたところ、教授12人がChatGPTを選び、人間による翻訳を選んだのは2人にすぎなかった。あとの2人は「判断不可」を宣言した。
■AI翻訳の勝ち…「言語学習量の臨界点を越えた」
AIに軍配を上げた教授たちは、ChatGPTの翻訳について「韓国の歴史・文化に精通し、原文のリズムと文体をうまく生かしている」と評価した。例えば「上には空/下には地面が/自分のしたことを知らないと思っているなら/これは誰をだまそうということなのか」という一節で、人間の翻訳者は空を「Sky」と訳し、ChatGPTは「Heaven」と翻訳した。作者が儒学者だったことを考えると、物理的な空間(Sky)ではなく、神の概念を持つHeavenの方が適切だというわけだ。他にも「原文の対句法を英文学的にうまく表現した」「単語数が少なく簡潔で、原文の感じが生かされている」などの評価があった。
人間の訳文の方が優れていると評価した教授らは「非文法的な文章が少ない」「タイトルの翻訳がより自然だ」といった点を挙げた。判断不可を宣言した1人は「仮に2つのうち1つがAI翻訳だったとしたら、どちらがよりいい翻訳かというのをあえて聞かなくても、そんなに差がなかった」とした上で「AI翻訳は人間の翻訳と区別できないほど進化したということに注目しなければならない」と述べた。
専門家らは、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は文脈をきちんと理解できるように設計されているため、もともと翻訳に強い上、大量の学習も積み重ねているため成熟段階にあると評価する。高麗大ヒューマン・インスパイアードAI研究院のチェ・ビョンホ研究教授は「少なくとも韓国語-英語の翻訳では、人間の翻訳家の代わりができるレベルだ」として「ウェブ上に公開されているデータは既に全部学習したと考えるべきで、これによって学習量が臨界点を越えた」と指摘した。
今回のテストは、国会文化体育観光委員会所属の閔炯培(ミン・ヒョンベ)議員室(与党・共に民主党)が実施した。閔議員は「AIは既に目を背けることのできない現実だ」として「AIの効率は活用するとしても、これからは人間ならではの文化的脈絡や倫理について頭を働かせなければならない。今はその時期に来ている」と話した。
■「世界文学全集」の牙城崩れる…「キンパンネ」などの新語は意味不明な誤訳に
AIの翻訳力が向上したことで、これまで民音社・文学トンネなど大手出版社の牙城とされてきた「世界文学全集」を新たに出版する出版社が登場している。著作権保護の時効(著者の死後70年)を迎えた名作の数々を、AIを使って金をかけずに翻訳するのだ。
ここ30年以上にわたって科学・技術関連の学術書を出版してきたある出版社が、出版界で話題になった。昨年10月からわずか3カ月で『星の王子さま』『変身』など12冊を出版したのだが、この出版社には専門翻訳家がおらず、生成AIのGemini(ジェミニ)で編訳して人間の編集者が翻訳内容をチェックしていた。問題は、この出版社が手掛けたホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の翻訳文の中に「無駄な会話は意味がありません。アルパノ?(私には関係ない)」と新語が混じっていたこと。「キンパンネ!(マジでムカつく)」「スブルジェ(自分で招いた災難、自業自得)」などの新造語まで古典作品の翻訳に使ってきたのだ。出版社の社長は「翻訳料がかかると本を制作できないため、AIに翻訳させたが、新造語の翻訳も世代間のコミュニケーションを面白くするためには必要だと思ったため、あえてそのままにした」と話した。
■「人間の翻訳家がAIを活用する時代に」
海外では人間とAIが協業するビジネスモデルが登場している。英国の「グローブ・スクライブ(GlobeScribe)」は昨年夏から、本1冊を100ドル(約1万5500円)で翻訳する事業を始めた。韓国で原稿用紙1000枚ほどの小説1冊を翻訳する場合、翻訳料が最低でも300万-400万ウォン(約32万-42万6600円)掛かるが、それを考えると非常に安価だ。この出版社では、AIがテキストの大部分を翻訳し、文学性が高い部分や複雑な部分を人間の翻訳家が手掛ける。英国の翻訳家らはこれに反発している。英国作家翻訳家協会のイアン・ザイルス会長は、英紙ガーディアンとのインタビューで「AIが作家(翻訳家)に取って代わり、人間の翻訳家の繊細な作業を同レベルでこなせるとか、そのレベルを凌駕できると主張するのは完全に誤った考えだ」と述べた。
韓国の翻訳家、ノ・スンヨン氏は「AIはこれまで人間が練りに練って生み出した翻訳の文章を学習して使っているため、近い将来は既存の翻訳書のほとんどはAIでも十分に訳せると思う」としながらも「AIでとんちんかんな訳文が出来上がったりしないように、監修作業がいっそう重要になってきた」と指摘した。
パク・チンソン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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