▲写真=UTOIMAGE
2020年9月、韓国海洋水産部(省に相当)の公務員だったイ・デジュン氏が西海で北朝鮮軍に銃で撃たれて死亡し、遺体が海上で焼却されるという蛮行を受けた。当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権の対応は、「自国民の保護」という国の基本的な責務に完全に背くものだった。政府の対北朝鮮政策のブレーンだというスタッフたちは、集まってこんな言葉まで口にした。「イさんと家族にとっては非常に遺憾で不幸なことだが、今回の..
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▲写真=UTOIMAGE
2020年9月、韓国海洋水産部(省に相当)の公務員だったイ・デジュン氏が西海で北朝鮮軍に銃で撃たれて死亡し、遺体が海上で焼却されるという蛮行を受けた。当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権の対応は、「自国民の保護」という国の基本的な責務に完全に背くものだった。政府の対北朝鮮政策のブレーンだというスタッフたちは、集まってこんな言葉まで口にした。「イさんと家族にとっては非常に遺憾で不幸なことだが、今回の件が、転禍為福(災い転じて福と成す)のきっかけにもなるだろう」。国民が殺害されたというのに、激怒するどころか、これを加害者と対話するきっかけにしようとしたのだ。北朝鮮当局の目にこのような韓国がどう見えたか、そんなことは聞くまでもないだろう。自国民が死んだのに報復を諦める国など、大したことのない相手だと思われるだけだ。
先日、駐韓ロシア大使館がロシア・ウクライナ戦争の発生から4年を迎え、ソウルのど真ん中で起こした出来事を見て、その時のことを思い出した。北朝鮮にも見下されたのだから、ロシアにも見下されるだろうという思いを振り払うことができなかった。ロシアは大使館の建物に「勝利はわれわれのもの」という垂れ幕を掲げ、激戦地クルスクの占領に寄与した北朝鮮について「北朝鮮軍の偉大さを忘れない」と述べた。「偉大な北朝鮮」などというフレーズは、北朝鮮の人民軍が本来どんな集団で、彼らが韓国の地でどんなことをしたのか知っていれば到底出てこない表現だ。朝鮮人民軍の起源は、中国の国共内戦当時に中共軍(中国人民解放軍)に味方した朝鮮義勇軍だ。そのときに積み上げた実戦経験を土台に、6・25(韓国戦争)で同族の胸に銃弾を撃ち込んだのだ。今回ロシアに派遣された北朝鮮軍も、現地で豊富な実戦経験を積んでいるのだから、有事の際にわれわれにとって大きな脅威となるのは間違いない。そのような状況で、ロシアは北朝鮮を称賛したのだ。「どうせお前たち(韓国)は何もできないだろう」といった調子だ。このように見下されてもわが国の政府はあいまいな態度でやり過ごした。全世界が韓国の対応を注視していた。
大韓民国は、このような侮辱に耐えなければならないような弱小国ではない。軍事力は世界5位であり、立派な武器輸出国だ。核は持っていないが在来式戦力は北朝鮮を圧倒する。地下バンカーに隠れている金正恩(キム・ジョンウン)総書記を震え上がらせる玄武ミサイルも保有している。こんなに力があるのに卑屈な態度を取っていれば、それは相手にわれわれを侮る口実を与えることになるだろう。
互いを守ろうと喜んで自分の血を流す国家間関係が「血盟」だ。ロシアとウクライナの戦争をきっかけに、北朝鮮とロシアはそのような関係になった。ロシアは北朝鮮と包括的戦略パートナーシップ条約を結び、相互に軍事介入する道を開いた。しかし、このような脅威に対応するための韓米日共同軍事訓練について、韓国は米国に「日本抜きでやろう」と提案して台無しにし、最後の命綱だった韓米軍事演習でさえも2023年比で30%も規模を縮小したという。昨年、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長(当時は宣伝扇動部副部長)が「大規模な合同軍事演習を立て続けに敢行する韓国・米国と向かい合って座ることはない」と発言すると、韓国は予定していた軍事演習も先送りした。
北朝鮮が「韓国と向かい合って座ることはない」と言った本当の意味は、暮らしぶりの豊かな韓国の影響力が北朝鮮に及ぶことを恐れ、それを遮断したいということだ。それにもかかわらず、軍事訓練を口実にされてそのまま相手の言いなりになる韓国は、扱いやすい容易な存在に過ぎない。北朝鮮はこれまで、くみしやすく軟弱な韓国に対話を懇願してきたことがない。北朝鮮を圧倒する経済力、文化、軍事力を持ちながら、何かにつけて北朝鮮に「壊滅的な打撃を与える」と脅されるのも、われわれ自身が招いた結果なのだ。
国がこのようなありさまなのだから、将兵たちが汗を流して訓練し、意を決して国防に身をささげるはずがない。最近の兵長の月給は200万ウォン(約21万4000円)だという。月給がせいぜい1万ウォンだった筆者の世代とは天と地の差だ。しかし、借金が膨らんで債務整理に追い込まれる将兵が過去5年で80%も増えたという。兵舎のベッドでスマートフォンを使ってオンラインカジノにアクセスし、賭博にのめり込んで借金を背負ってしまうというわけだ。いくら威力的な武器を保有していても、軍がこのような状態に陥っている国家を誰が恐れるだろうか。国が尊重されるのも見下されるのも、全ては自分たちの振る舞い次第だ。見下されるのには全てそれなりの理由があるのだ。
金泰勲(キム・テフン)論説委員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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