世界の聴衆を魅了した日本の全盲ピアニスト

辻井伸行さん、米国のコンクールで優勝

世界の聴衆を魅了した日本の全盲ピアニスト

 生まれながらの全盲というハンディを持つ20歳の日本人ピアニストが、世界を感動させた。8日(韓国時間)、米テキサス州フォートワースで行われた「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」で、全盲の視覚障害を持つ辻井伸行さん(20)が優勝を果たした。1962年に始まって以来、4年に1度開かれる同コンクールは、米国で最高レベルのピアノ・コンクールの一つとされている。同コンクールの本選に出場した視覚障害者としては、1973年のジュディス・ウォーカー氏がいるが、2次審査で脱落している。

 6日の決勝で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の協演者として出場した辻井さんは、指揮者のジェームズ・コンロンさんに支えられながら、ゆっくりとステージに上がった。笑みを浮かべ聴衆にあいさつし、ピアノの前に座った彼は、目の前の鍵盤を見ることも、オーケストラのメンバーや指揮者の顔を見ることもできない。しばらく独奏を休む際にも、次の鍵盤を探すため、高音の鍵盤から一つ一つ手探りしていた。

 だが、叙情的な第2楽章が始まるや、辻井さんは温かみのある音色を奏で、自然な演奏を見せた。その旋律は、決勝が行われたバス・ホールを埋め尽くした約2000人の聴衆だけでなく、インターネットでの生中継を通じ、世界数十万人のネットユーザーたちの耳にも響いた。演奏が終わった瞬間、辻井さんはほかの誰よりも明るい微笑みを浮かべていた。聴衆は一斉に立ち上がって大きな拍手を送り、彼はそんな客席の様子を見ることはできなかったが、何度もおじぎして声援に応えた。

 翌日のリサイタル。ベートーベンのピアノソナタ『熱情』の第2楽章を披露した辻井さんは、素朴な旋律を弾き始め、次第に聴衆に感動を与えていった。コンクールのウェブサイト上で行われたネットユーザーによる投票で、辻井さんは6人中2位となった。

 辻井さんは4歳のとき、母親にもらったショパンのポロネーズのCDを聴き、おもちゃのピアノを弾いた。その後、1日に4-8時間もの猛練習を欠かさず、7歳のときには視覚障害を持つ児童・生徒を対象としたコンクールで入賞、12歳のときには東京のサントリー・ホールでソロ・リサイタルを行った。2007年にレコード会社「エイベックス」から2枚のCDをリリースし、同社の勧めで今回のコンクールに出場した。コンクールの演奏者紹介文に「音楽の前にはいかなる壁も存在しないというのが信念だ」と書いた辻井さんは、インタビューで「ピアノを通じ、人々に喜びを与えるということを楽しみにしてきただけで、決勝に出ることは考えてもいなかった」と述べた。

 なお、今回のコンクールでは、中国の19歳のピアニスト、チャン・ハオチェンさんも辻井さんとともに優勝した。また、韓国のソン・ヨルムさん(23)が2位となり、同時に「室内楽演奏賞」も受賞するなど、アジア勢が大活躍した。

フォートワース(米テキサス州)=キム・ソンヒョン記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 世界の聴衆を魅了した日本の全盲ピアニスト

right

あわせて読みたい