【コラム】「嫌中」の流れ弾食らう韓国人

 今月初め、パキスタンにある韓国大使館は、韓国企業の現地駐在員や韓国系在住者たちに緊急の告知文を送った。「パキスタン国内の中国企業や中国人を狙ったテロの兆候がキャッチされているが、外見が似ている韓国人がいわれない被害に遭う恐れもあるので、十分に注意するように」という内容だった。その前日に中国大使館が「中国人と中国関係機関がテロのターゲットになっている」と自国民に緊急告知したのがきっかけだった。この告知は二日後、韓国外交部(省に相当)海外旅行安全サービスを通じてインターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でも伝えられた。

 外交部と在外公館は駐在国の天災・政情不安・特定事案による反韓感情触発などで段階的に警報を発令する。最悪の場合、撤収命令や入国禁止措置を取る。ところが、駐在国の問題でも、韓国が関係のない第三国の国民と外見が似ているという理由で身辺安全警告が出たのは類がない。

 異例の警告が出された背景には、中国がアジア・アフリカでの影響力拡大を目指して土木を中心に行っている大規模事業「一帯一路」がある。パキスタンは一帯一路における最重要国だ。米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)など外信は、中国大使館のテロ警報発令を伝える際、「パキスタンだけで一帯一路プロジェクトが300件進行中で、そのため中国人2万人が滞在している。反中武装勢力によるテロの脅威は常に存在する」と報じている。

 事実、中国国内の分離・独立志向が強い新疆ウイグル自治区の一部住民がパキスタンの武装勢力に加わっていることが分かり、5月には中国人2人がパキスタンでイスラム国(IS)メンバーに殺された。武装勢力は外見だけで国籍の区別が付かないので、韓国人の被害も心配せざるを得ない状況だ。

国際部=鄭智燮(チョン・ジソプ)記者
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