【コラム】この世界で「善良な政府」は生き残れるのか

 トランプが貿易報復をちらつかせる目的は明らかだ。他国の企業と雇用を米国にもたらすことだ。効果は既に表れている。韓国企業の海外脱出の動きが出始めた。関税爆弾に見舞われた鉄鋼メーカーは米国に工場を移転しようとしている。家電・石油化学分野の大企業も米国への投資計画を増やした。それだけ韓国の雇用が流出することになる。米国だけではない。全ての国が企業と雇用を求め争奪戦を繰り広げている。守れなければ奪われるというジャングルの戦いだ。

 ジャングルのようなグローバル競争の本質を韓国政府は理解できない。自分たちの物を守るどころか、追い出せずに焦っている。増税でコスト負担を増やし、自ら競争力を損ねている。労働改革も捨て去った。企業は既得権益勢力なので、反企業こそ公正につながると言うのだ。しかし、大企業も国外に出れば、大したことにない弱者にすぎない。企業が死闘を繰り広げているのに、政府は企業の足を引っ張っている。世の中の実情との間に壁を築いてしまっている。

 文在寅政権は「善良な政府」というコンプレックスにかかったとも言われる。経済も「善良な経済」、成長も「善良な成長」を目指すというのだ。文政権にとって、善良は公正と社会の正義を意味する。労働者と弱者に対して、善良な政策のみ取ればよいと考える。

 世の中に韓国だけが存在するならば、それでもよかろう。しかし、全世界で展開される国益の角逐で善良は美徳にはならない。世界のジャングルを舞台にしたゲームは精巧な国家戦略と柔軟な戦術を駆使した国が勝利する。「善良な政府」はすなわち「無能な政府」の道を歩むという告白に等しい。

朴正薫(パク・チョンフン)論説委員
前のページ 1 | 2 | 3 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】この世界で「善良な政府」は生き残れるのか

right

あわせて読みたい