ところが李明博(イ・ミョンバク)政権では「2015年」に再延期し、朴槿恵(パク・クンへ)政権では「条件が満たされた場合」に変えてしまった。米軍はいつでも統制権を渡すという立場で、韓国側が二の足を踏んでいる、という格好だった。今の文在寅政権でも、韓国軍の予備役将官がビンセント・ブルックス韓米連合司令官に「率直に言って、統制権が移管されたら、米軍は韓国軍の指揮を受けられるのか」と尋ねると、すぐに答えが出てきた。「何ら問題はない」。その瞬間、予備役将官は「これほど簡単に答えるところを見ると、ワシントンで方針が決められたな」という印象を受けたという。
米国は国益のため統制権の移管をより強く望んでいるのに、韓国政府は「軍事主権」を取り戻すかのように騒ぎ立てている、という意味だ。「統制権を持たない軍隊や国家がどこにあるのか」という単純な言葉に全国民がだまされていたのだ。果ては一部の保守論客すら「韓国軍は米国の後ろに隠れ、独り立ちできない」「責任感や主人意識を失わせた」「保守が統制権移管の先頭に立て」と同調した。
国家の生存と直結する安全保障を巡り名分に沿って空理空論を語る、朝鮮王朝の朱子学者を見るかのようだ。統制権と軍事主権の事実関係を確かめてみることもしない。今まで韓国軍の戦力増強計画、作戦訓練、服務規程、兵力削減などは米国の許諾を受けて行われたのか。どんな主権を制限されていたのか。統制権が本当に「軍事主権」問題であれば、韓国軍が韓米連合司令官、米軍が副司令官になると米国が軍事主権を失うという論理になる。