統制権がなく主人意識がないという主張も、幼稚なことこの上ない。欧州諸国の集団防衛機構である北大西洋条約機構(NATO)の司令官は米軍が務める。西欧も戦時の状況では韓国のように統制権がない。この国々を、主人意識がない国と言えるだろうか。
統制権は、戦時の状況で連合作戦を行う際、誰が指揮権を行使するかの問題だ。戦力の強い国から指揮官を出せば、戦争を引っ張っていく上で有利だ。韓半島(朝鮮半島)が戦争状態になって米軍の最先端軍事技術や兵器システムが入ってきた場合、韓国軍には、これを指揮する能力がない。
これまで統制権が米軍にあったというが、実際の権限を見てみると、韓米両国が共同で行使するようになっている。統制権が発動される状況かどうかは、両国の制服トップが共に審議する。その後、両国大統領がそろって同意しなければならない。戦争が起きたら韓米連合戦力で戦うのだ。米国が連合司令官を務めれば、米軍が戦争の勝敗により多くの責任を負うことは避けられない。米軍戦力の支援を受ける上でも、絶対に有利だ。
米国が統制権の移管に積極的なのは、命を懸けて戦わなければならず、結果に責任を負うという、その負担を減らせるからだ。有事の際、戦力の削減や在韓米軍の保護をまず考えることが米国の国益にかなう、というわけだ。こうした米国の意図を読み取ってもなお「統制権の移管」を成果として飾り立てるのなら、現政権の中核は危険な集団だ。知らずに押し付けられるのなら、無能な集団だ。
かつて盧武鉉大統領は、統制権移管のカードを切った1年後に平壌で首脳会談を行った。現政権も統制権移管を急ぎ、北朝鮮に前もって誠意を示そうとするのであれば、韓国は本物の危機にひんする。
崔普植(チェ・ボシク)先任記者