政治学会の報告書を無視して「北は主敵」記述を削除した韓国軍

政治学会に依頼作成した報告書無視

 韓国国防部(国防省)が「北朝鮮に対する主敵概念を維持すべきだ」とする韓国政治学会の報告書の提出を受けながら、韓国軍将兵の精神教育教材から主敵に関する表現や内容を大幅に削除したことが4月7日までに分かった。このため、北朝鮮との軍事合意と交流協力を推進してきた青瓦台(大統領府)のムードに合わせるため、報告書を黙殺したのではないかとの批判が出ている。国防部は2017年、「精神戦力教育基本教材」の製作に向けた報告書作成を韓国政治学会に委託した。国防部は当時、「中立的な報告書を作成してもらいたい」という注文も付けていた。政治学会所属の教授チームは7カ月の作業の末、昨年前半に報告書を提出した。

 自由韓国党の白承周(ペク・スンジュ)国会議員が国防部から提出を受けて公表した報告書は「韓国にとって核心的で直接的な敵は北朝鮮の政権と北朝鮮軍だ」とし、「北朝鮮の南(韓国)に対する赤化の企てに対して支援、同調する勢力も敵と言える」と指摘した。また、「北朝鮮の最終目標は強盛国家建設であり、体制を維持し、韓半島(朝鮮半島)の赤化統一を具現することだ。民族の情緒を刺激する政治スローガンを掲げ、『在韓米軍撤収』『平和協定締結』などという言葉をしつこく駆使している」とも分析した。報告書の作成に加わった教授は「7カ月間にわたり、専門家、ジャーナリスト、一般人などの意見を十分に集約した」と説明した。

 しかし、国防部は報告書を受け取ってから1年後の今年3月、「北朝鮮=主敵」という内容を削除した精神戦力教材を製作し、末端部隊に配布した。教材には「大韓民国の主権、国土、国民、財産を脅かし侵害する勢力を敵と見なす。南北会談と米朝首脳会談が実現し、南北は新たな安全保障環境をつくり上げた」と記述されている。

 国防部は「専門家の監修と内外の意見集約プロセスを経て、最終案を確定した。将兵教育には安全保障環境の変化を反映し、北朝鮮の脅威だけでなく、超国家的、非軍事的脅威まで包括する概念を盛り込んだ」と説明した。白承周議員は「中立性を確保するための報告書を受け取っておきながら、青瓦台と北朝鮮の顔色をうかがい、意向に沿う部分だけを取捨選択したものだ」と批判した。専門家は「敵が誰かも知らなければ、安全保障のアイデンティティーを失い、北朝鮮に対する態勢まで混乱することになる」と警告した。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者
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