ラジオのある深夜番組のリスナーから「自分は2000年生まれなのだが、一日でよいから1990年代に暮らしてみたい」というメッセージが寄せられた。その時代を生きた者にとっては、パソコンのデータ通信がのろくて、週に休みは1日だけで、レモン焼酎を飲んでいたあの時代の何が良いのかという気もする。ただ、当時はきょうよりはあす、今年よりは来年が良くなるという確信があった。通貨危機前まで雇用はほぼ毎年50万人ずつ増え、経済が6-7%成長を続けていたので活気もあったと言える。
1990年代がうらやましがっているのは青年たちだけではない。働き盛りの40代半ばの人たちにも90年代に帰りたいと話す人が少なくない。財テクをして、豊かに暮らそうという期待が可能だった時期だからだ。経済の活力が低下した現在、給与労働者が金持ちになることは本当に難しくなった。中産階級の財テクの代表的な手段だった不動産分譲市場で最近「チュプチュプ族」という新語が流行している。「チュプ」には韓国語で「拾う」という意味があり、マイホームを実際に必要としている人が金融引き締めでローンを組めなくなる中、市場で新築物件を拾っていく富裕層を指す言葉だ。40代半ばのAさんは「20年積み立ててきた住宅請約通帳(積立口座)で分譲物件を購入しようとした。ところが、政府は不動産投機を阻止するためとして、9億ウォン(約8600万円)を超えるマンションの中途支払金に対する融資を禁止した。その結果、9億ウォン以下の物件に投機が集中し、競争率が上がった。政府は庶民層のマイホーム取得を支援すると言っていたではないか」と憤った。
1990年代に「世界一流」というスローガンを叫んでいた企業は政府、労組の顔色をうかがい、やる気を失っている。保険会社B社の役員は「一般採用はよほどでなければ実施しない。非正社員を(労組の)顔色を見ながら増やしているというのに、60歳までどうやって責任を持てるのか。早くロボットを開発して使ったほうがましだ」と話した。IT系大企業の幹部は「ニュースを見ても過去の話ばかりで、未来の話は天気予報ぐらいしか見当たらない。世界の企業は全速力で走っているのに、過去の清算はそれほど重要なことなのか」と漏らした。