廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代、租税研究院(現・租税財政研究院)の先任研究委員が政府の政策を批判したところ、懲戒を受けた。不動産政策に「補完が必要だ」と主張したのだが、職位解除と「1年間の対外活動禁止」処分が下されたのだ。いかなる学術会議にも司会者・発表者・討論者として参加してはならず、聴衆としての参加だけが認められた。研究活動も停止させられた。メディアのインタビューも禁止となった。インドのカーストで最も低い身分に当たる「不可触賤民(せんみん)」となってしまったのだ。
この研究員が、(地元経済活性化のために発行された)地域通貨は失敗だったという報告書を出すと、14年ぶりに再び「現代版・焚書坑儒(ふんしょこうじゅ、言論・思想・学問などを弾圧すること)」に遭ってしまった。地域通貨が路地裏の商圏を活性化させられず、逆に通貨の発行費用、国庫補助金の無駄遣いなどの副作用を生み、今年も229の地方自治体が総額9兆ウォン(約8000億円)分の地域通貨を発行して経済的純損失が2260億ウォン(約200億円)に達する、というのが報告書の要旨だ。報告書を作成した研究員は「地域通貨を次々と発行するのは、地域の政治家たちの政治的目的のせいだ」と指摘した。
すると、地域通貨を自身の政治財産と考えている李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が先週から連日、租税財政研究院を攻撃し始めた。初めは「根拠もなく政府の政策を批判する間抜けな国策研究機関」と騒いでいたが、翌日には「鉄の飯びつ(公務員のような安定した職業のこと)が、国民の苦痛から目を背けている」と指摘した。それでも怒りがおさまらないのか、その次には「保護すべき学者でも研究でもなく、清算すべき積弊にすぎない」と激しい言葉を浴びせた。設立から約30年が過ぎた国策研究機関も、気に入らなければ「積弊」となる。