問題は横断幕だけではない。デモ隊のスピーカーから流れてくる騒音の方が問題だ。警察が測定したこのデモの最も大きな騒音は90㏈。列車が25メートル離れた所を通り過ぎる際に聞こえる音と同じ大きさだ。このゴルフ場の15番ホールや11番ホールのティーボックスに立つと、デモ現場の騒々しい民衆歌謡曲やスローガンがそのまま聞こえる。デモ現場からティーボックスまでの直線距離は15番ホールで30メートル、11番ホールで50メートルしかないからだ。
利用客のパクさん(50代)は「集会の騒音でティーショットに集中できなかったことは一度や二度ではない。労働者たちも事情があるだろうが、何の罪もない客に被害を与えてはならないのでは」と語った。同ゴルフ場関係者は「警察に通報してもその時だけ。警察が帰るとまた大きな音がする」と言った。
サムスン物産が運営する安養カントリークラブ(京畿道軍浦市)では、正門を通ってクラブハウスに向かう途中、道の両側に長さ8メートルという特大の横断幕が次々と見えてくる。李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長の写真と共に「犯罪者」「労組破壊組織犯罪実刑」などと書かれている。今年2月ごろ、民労総が張り出したものだ。ゴルフ場に来るすべての利用者がこの横断幕を見る。利用客のムンさん(31)は「気持ちよく遊ぼうと思って来たのに、横断幕を見て不快になった」と話した。この横断幕も民俗博物館同様、「労組が所属の職場に張り出したもの」という理由で、会社側がむやみに取り外すことはできない。
法的に争う余地がないわけではない。慶北大学法学専門大学院のイ・ダルヒュ教授(労働法専攻)は「横断幕をほかの場所に掲示することができるのに、あえて施設運営に支障を来す所に張り出したのなら、正当な組合活動にはならない」と話す。だが、企業側は「労組などごねる相手に勝ったところで、もっとひどい方法をやってくるのが目に見えているので、実益がない」と語った。