至る所が埋め尽くされても強制撤去できない…「横断幕共和国」

集会申告さえすれば枚数制限なく掲示可能、強制撤去できず

 事実、その通りだ。現代・起亜自動車のケースがその代表例だろう。現代自動車はソウル市瑞草区にある本社入口で7年間にわたり横断幕数十枚を張り出して葬送曲を流し続けデモをしてきた人物を相手取り、昨年訴訟を起こした。ソウル中央地裁は訴訟を起こしてから約1年後の今年9月18日、「デモの内容と葬送曲は何の関連性もない」「横断幕の内容も会社の名誉を毀損(きそん)する」として現代自動車の主張を認めた。ところが、この人物に言い渡された損害賠償金は1000万ウォン(約94万円)で、現代自動車側が支出した弁護士費用にも満たない。しかも、この人物は控訴して二審が始まった。さらに、2カ月過ぎた今も横断幕とスピーカーによるデモは続いている。横断幕の内容が変わり、葬送曲が民衆歌謡曲に変わっただけだ。

 現行法上、デモ用横断幕は「集会・デモのための道具」として認められており、許可されている。警察に集会申告した場所に30日間掲示することが可能だ。枚数制限もない。10枚でも100枚でも張り出していい。だが、実際にはデモ参加者がいなくて横断幕だけ張り出されるケースが多い。

 先月20日昼12時30分ごろ、ソウル市鍾路区の「慶熙宮xiマンション」裏の道路には、「ソウル学校非正規職連帯会議」という団体の横断幕が14枚張り出されていた。ターゲットはマンションの向かい側にあるソウル市教育庁だ。横断幕の周辺にはデモ参加者が1人もいなかった。同日、ソウル市松坡区のソウル東部地検裏問前にも「(自殺した後、セクハラ〈性的嫌がらせ〉問題が浮上した朴元淳〈パク・ウォンスン〉ソウル前市長を擁護した女性検事)チン・ヘウォンは風俗法違反」などの横断幕が掲げられていたが、デモ隊は見当たらなかった。

 横断幕のひぼうの対象になっているからと勝手に横断幕をはがすと犯罪者になる。器物損壊や窃盗などの罪が適用される。

 ペ・ビョンイル元法学教授会会長は「集会・表現の自由や労働組合の争議権も重要だが、そうした権利が他人に被害を与え、他人の権利を制限・侵害するケースまで無期限に容認されているわけではない」と話す。

 警察関係者は「集会・デモが行われている時間だけ許可するなど、関連法令の補完が必要だ」と語った。法務法人「オンダム」のソ・ビョンウク弁護士は「デモ用横断幕の掲示に関する制限規定を設け、違反時には横断幕により被害を受けた側が強制撤去などを申請できる救済手続きを整えるべきだ」と述べた。

アン・ヨン記者、キム・ヨンジュン記者、高錫泰(コ・ソクテ)記者

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