【寄稿】「対北ビラ禁止」は自滅政策

文在寅政権「北朝鮮に向けて風船を飛ばす行為は対北心理戦となるため中断すべき」と主張
ホワイトハウス前の人権デモを心理戦と呼ぶに等しい…米国は懸念している

 どちらも一見するとそれらしく聞こえる。北朝鮮政権が北朝鮮に風船を飛ばされることを嫌っているのは事実だ。今年の夏に金与正(キム・ヨジョン)は文在寅(ムン・ジェイン)政権に対して声明を出し、風船を飛ばす行為について「韓国でこれを禁止せよ」と要求した。しかし北朝鮮は「活動家たちが風船を飛ばす国境付近の村に報復する」という脅迫はしなかった。韓国市民を標的として大衆的な怒りを引き起こすことは北朝鮮の意図するところではない。報復は軍事的あるいは公式の目標物に向けて行われるものだ。そのため北朝鮮は南北連絡事務所を破壊したのだ。

 人権活動を「心理戦の手段」と表現するのは不適切な言葉の使い方だ。「心理戦」は政府が敵の標的に対して実行する軍事活動であり情報活動だ。例えば政府の指揮による作戦として、DMZ(非武装地帯)全域の拡声器を使って放送を行うことは心理戦だ。一般市民中心の非政府機関による抗議行動や風船飛ばしは人道主義的な表現の一つの形ではあるが、情報活動や軍事作戦ではない。ホワイトハウスの前でトランプ大統領の肖像画を燃やす黒人の人権を求めるデモを「心理戦」と呼ぶようなものだ。しかも統一部は「風船を使って北朝鮮に飛ばした物が逆に韓国に吹き戻され、国境付近の村に落下した場合は住民がこれを撤去しなければならない」と主張している。これは単なるごみ処理の問題だ。

 風船を禁じることは、北朝鮮の人権運動を後退させたい韓国政府が進める政策の一環であることは間違いない。韓国におけるかつての進歩性向の政府は、北朝鮮人権団体に対して「上品な無視」というやり方で対処した。平壌を批判し、これによって南北関係にマイナスの影響を及ぼしかねないこれらの団体のやり方は、過去の進歩的な韓国政府にとっても決して好ましいものではなかったが、だからといって積極的に彼らを弾圧するようなことはしなかった。そう考えると今われわれは新たな秩序を目の当たりにしているのだ。

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