【コラム】「その脱北は善良な脱北」

 しかし、命懸けで韓国に到着した脱北者に対する韓国の待遇はひどい。今年、統一部による脱北者定着のための支援予算は前年比で54億ウォン(約5億1000万円)削減された(マイナス13.9%)。コロナ禍の長期化により脱北入国者が減ることを予想し決定したというが、「北朝鮮政権の顔色をうかがっている」という声が上がっている。数年間で脱北団体に対する統一部の「脱北民定着事業費」支給額は半減し、国家情報院・警察の予算で支援金が支給されていた脱北者団体も支援が途絶えてしまった。米国務省は昨年3月、人権報告書で「韓国政府が北朝鮮と対話に乗り出したことで、脱北団体は『北朝鮮に対する非難を減らすよう政府から直接・間接的な圧力を受けている』と語った」と明らかにした。

 実際に12月29日に公布された「対北朝鮮ビラ禁止法」は、韓国政府が脱北団体の口止めにどれほど積極的なのかを物語っている。北朝鮮にビラやUSBメモリーなどを散布すれば3年以下の懲役、または3000万ウォン(約280万円)以下の罰金を科すよう定めた同法は、北朝鮮住民の目と耳をふさぎ、韓国行きの脱北ができないよう阻止することだろう。韓国で制定された法ではなく、北朝鮮の「1号教示」のようだ。

 脱北者を冷遇すれば、どのような結果が待ち受けているのだろうか。結局、脱北者たちは命懸けの韓国行きよりも、中国行きをより多く選択するようになるだろう。中国に同化する脱北者が増えれば増えるほど、中朝間の距離はさらに縮まり、南北の距離はさらに遠ざかることだろう。

イ・ボルチャン記者

■韓国が2021年世界軍事力ランキング6位、北朝鮮28位…日本は?

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい