韓国政府の顕著な特徴の一つは、長期的戦略がほとんどないという点だ。北朝鮮に対する長期的アプローチ法がないというのも明らかだ。5年単任制の大統領は未来の成果に対する功績を認めてもらえない。韓国では、政治だけでなく他の分野のリーダーも、前任者の成功を引き継ぎたがらない。
だから、政策を作る人々は、深い戦略的要因よりも短期的・戦術的利点を優先視したいという誘惑に陥る。逆に金正恩は、戦略的に考えることができ、目の前の和解を追う韓国の切迫感を操縦できる。加えて金正恩は、この「操縦」がかなりうまい。よく知られている通り対北ビラ禁止法は、金正恩の妹、金与正(キム・ヨジョン)が脱北者を「人間のくず」と呼んで開城工業団地の連絡事務所ビルを爆破した直後に出てきた。
韓国の対応は「泣く子に乳を飲ませる」ということわざによるもののようだ。それは失策だった。良き養育の第一の原則を忘れている。「あしき行動に補償を与えたら、あしき行動を奨励するだけ」という原則だ。金正恩は今、文大統領の二つの弱点を知っている。時間があまりないということ、そしてあしき行動にも喜んで補償しようとすることだ。
大統領が望む突破口を用意するには、1年しか残っていない。これまで見てきたように、そうした突破口は開かれないだろう。韓国政府は、この事実を悟る前に、北へまた何を与えようとするのだろうか。
マイケル・ブリン元ソウル外信記者クラブ会長、『韓国、韓国人』著者