新聞社のある同僚は、長年の経験を感じさせる一方で、非常に風変わりなコラムを書いた。「単にウケ狙いのトーク番組の視聴率が30%台を超えたとき、視聴者たちは正義を求め始めた。世間で失墜し堕落してしまった正義を、歌番組で大賞を決めるときくらいは、せめてその公正さを守ってほしい」。世の中で失われてしまった正義を、歌の祭典でなんとか見いだそうとしているというわけだ。視聴者による投票率を大幅に増やした理由がまさにここにあるという。
筆者が見つけた同番組の成功アルゴリズムは「切迫感」である。ミスター・トロットのイム・ヨンウンとその母親の人生ストーリーや、ミス・トロットのヤン・ジウンが父親に腎臓を移植した話を聞くと、自然と目頭が熱くなる。一時、人生の崖っぷちに立たされ戻ってきた人のまるでサバイバルのようなデビュー舞台は、歌の実力とは別に切迫した感動を覚える。
ユーチューブで筆者のアルゴリズムは絶叫だ。正義失墜の時代に痛哭(つうこく)するかのように視聴者の分まで泣く。一人でも多くの視聴者の心をすっきりさせてあげることができるなら、何も恐れることはない。ソウル市長選や大統領選にも「当選アルゴリズム」がある。それは自ら公正さを示し、それを実践していることを証明すればいい。国民は不公正に疲れ過ぎている。
金光一(キム・グァンイル)論説委員