行方不明になった隊長は50分ほど酸素を供給できる呼吸器を携帯していたという。現場にいた仲間たちは煙に覆われた建物を見つめながら隊長の安否を気遣った。広州消防署予防対策チームでリーダーを務めるムン・フンシクさんは「現場で常に先頭に立っていた消防官だった」「奇跡が起こることを願っている」と述べた。隊長は1994年に消防官となり、それから27年にわたり勤務してきた。20代の息子と娘を持つ。京畿道知事からの表彰状をはじめ数々の賞を受けてきたことから、消防署内部での信頼も厚かった。
最初に火の手が上がった地下2階では消火作業の際に放水された水が大量にたまっている上に、周りは漆黒のように真っ暗で、消防官たちは非常に難しい作業を行っていたという。火災原因となった火花が散った場所は入り口から200メートルほど離れていた。消防署の関係者は「建物が崩壊する恐れがあったため、隊員たちは積極的に中に入りにくい状況だった」と説明した。消防官らは消火作業を行うよりも火の手が自然に収まるのを見つめるしかない状況だった。倉庫の中に積み上げられていた大量の燃えやすいものが全て燃えてしまえば火の手も収まるからだ。
2014年に完成した徳坪物流センターは広さおよそ3万坪(約10万平方メートル)の「メガセンター」に分類されている。首都圏への配送が中心だが、一部を地方にも配送する「ハブ・センター」の一つで、生鮮食料品を除く一般の荷物を主に取り扱っている。ここでは昨年6月と今年4月にコロナの感染者が確認され、その時は3-4日ほど閉鎖された。当時徳坪物流センターが取り扱っていた荷物は近くにある別のセンターに振り分けられ、配送の遅延は起こらなかった。クーパンの関係者は「現時点で配送に遅れが出るような状況ではない」と説明したが、閉鎖が長期化すれば配送のスケジュールに問題が生じるのは避けられないとみられる。