ところが今回のオリンピックでは水泳、陸上、近代五種など韓国が苦手としてきた種目で韓国新記録を出すなど優秀な結果を残した選手が多かったため、「恵沢基準が不合理」という声が相次いでいるのだ。アーチェリーや野球など、伝統的に韓国が得意とする種目やメダル獲得の可能性という観点とは異なるが、「無条件の『メダル至上主義』にこだわることは不合理」という意味合いのようだ。インターネットの掲示板でも「男子3メートル板飛び込みで4位に入ったウ・ハラム選手や、水泳の男子自由形100メートルで5位に入った黄宣優(ファン・ソンウ)選手にも結果に見合った恩恵を与えるべきだ」などの意見が相次いだ。メダルを獲得できなかった選手たちは特別な選抜試験を経て国軍体育部隊(尚武)に入隊するか、それにも脱落した場合は一般人と同じく徴兵に行かねばならない。
過去50年で韓国の国際的地位が高まり、国民の価値観も変わったことで「メダルの獲得イコール国威宣揚」という認識が変わったことも影響している。とりわけ今回のオリンピックではメダルは取れなくとも、それにチャレンジするため最善を尽くし、さらに潔く結果を受け入れる選手たちに熱狂する雰囲気も形成された。西江大学スポーツ心理学科のチョン・ヨンチョル教授は「メダルによって兵役特例を与える1970年代式の動機誘発のやり方は時代錯誤だ」とした上で「選手たちも国家より個人としての達成感を優先しており、国民も順位ではなく素晴らしい競技力を重視するなど、『国威宣揚』という概念が弱くなっている。そのため兵役特例の制度も再検討が必要だろう」と指摘した。