校内テストを実施しない韓国、民間の学力評価試験が乱立

 ソウル市内に住む小学校5年生のチョンさん(11)は今年上半期、ある教育出版関連の民間企業が主管する「数学学力評価」を受験した。受験料として3万ウォン(約2900円)払い、60分間で数学の問題25問を解いた。成績表には本人の点数と全国平均とその順位、地域平均とその順位などが書かれている。チョンさんの母親は「学校できちんと試験をしていないので、自分の子のレベルがどれくらいなのか分からず、このような試験を受けている」と話した。

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 全国の小学校で中期試験・期末試験がなくなり、新型コロナウイルス感染症流行以降の学力差に対する不安感が高まっていることから、小学生を対象とした民間学力評価試験が続々と登場している。子どもの学力レベルを確認しようという需要は多いが、学校では試験が行われないため、「校外試験」に子どもたちが集まっているということだ。

 教育関連出版社「天才教育」は今年、小学生対象の「全国国語学力評価」を新設した。小学校1年生から試験会場に入り、40分間で30問解いた。今年初めての試みだが、受験したいという問い合わせが殺到した。「飛上教育」では昨年から小学生対象の学力評価を実施している。また、「メガスタディ」は2019年から小学生対象の全国単位学力評価を実施中だ。教育界では、全小学生の5%程度に当たる10万-15万人が毎年このような民間試験を受験していると推算している。大学もこうした試験に参入した。延世大学や高麗大学などソウル市内にある主な大学が先を争うように小学生を対象にした全国単位学力評価を行っている。

 私教育企業はどこもそろって「全国単位で実施される試験を通じて、子どもたちの学習レベルを客観的に分析する」とPRしている。今年初めて小学生対象の「英語・算数学力コンテスト」を実施したエドテック(EdTech=テクノロジーを用いて教育を支援するサービス)企業の「NHNエデュ」では試験後、受験者の学習到達度を人工知能(AI)で分析した成績表を作成している。同じくエドテック企業の「アイスクリーム・エデュ」も全国単位の算数学力評価を実施し、全国順位や学習到達度の分析表を出している。

 児童やその保護者たちが民間試験に集まっている最大の理由は、ほとんどの小学校で中間試験や期末試験が実施されていないからだ。進歩系・左派の教育監(日本の教育長に相当)は「子どもたちを成績順に並べてはならない」として試験を廃止した。このため、現在は教科書の一単元が終わると、簡単な単元評価だけを行う。また、中学校1年生は「自由学年制」により1年間まったく試験を受けない。

 これに加え、文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年、全国単位で行われていた「国家水準学習到達度評価」を無作為抽出(全国児童・生徒の3%)に変えた。「学習到達度の評価は学校・児童・生徒の序列化だ」という全国教職員労働組合(全教組)などの要求を受け入れたためだ。このため、小中学生を持つ親たちが多く加入しているインターネット・コミュニティー・サイトには「小学校の時の『よくできる』という塾の話を信じたまま、中学2年になって初めて中間試験の成績を受け取って、子どもと一緒に大泣きした」という経験談がよく掲載されている。

 試験をなおざりにする空気が広がる中、児童・生徒たちの学力はこの4年間で下がり続けている。政府が今年6月に発表した「2020年国家水準学習到達度評価結果」によると、中学校の数学の場合、基礎学力に達していない割合が13.4%で、2017年(7.1%)の2倍近く増えた。中学校の国語の場合は2.6%から6.4%、英語の場合は3.2%から7.1%に急増している。

 明知大学のキム・ギョンフェ碩座教授は「結局、学校試験廃止は民間試験市場ばかりを育てることになるだろう」「このような現象が進めば、副作用が広がる可能性がある」と語った。民間試験が乱立して信頼度を保障するのが困難になれば、児童・生徒やその親たちは時間とお金を無駄にするだけだという懸念もある。光州教育大学のパク・ナムギ教授は「公教育で学習到達度をチェックしないことによる最大の被害者は、民間の試験さえ受けられない低所得層の子どもたちだろう」と語った。

パク・セミ記者

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