罪がないのに少年院に入所する韓国の子どもたち(下)

 しかし専門家はこの通告制度について「実際の趣旨とは違って運用されており、疎外された子供たちを一層社会から遠ざけかねない」と指摘する。実際に2018-20年に通告された件数の半分以上は通告者が親ではなく社会福祉施設の長、学校長、保護観察所長などいわゆる「外部の人間」だった。成均館大学法学専門大学院のヒョン・ソヘ教授は「通告制度は施設長などによる一方的な通報だけで全ての手続きが行われる。その過程で子供たちの防衛権が十分に保障されているとは言いがたい」「子供たちを一方的に保護処分の対象とすることは、子供たち本人の自己決定権にも反する結果をもたらす」と指摘する。この通告制度が虞犯少年に適用された場合、少年院への送致など予想外の結果をもたらす可能性があるということだ。

 少年法は虞犯少年について「性格や環境から考えて刑罰の法令に抵触する恐れのある10歳以上の少年」と定義している。罪を犯したわけではないが、その可能性があるので少年法の保護対象になるということだ。民主社会のための弁護士会(民弁)児童人権委員会のキム・ヒジン弁護士は「成人の場合は乱暴な行動をしたとしても、刑事法に違反しない限りは誰も刑事罰を受けず身体の自由が奪われることはない」「処罰的な性格を持たざるを得ない少年院への送致といった保護処分については、これを犯罪少年と同じく虞犯少年にも下すことは子供に対する処罰だ」と批判した。

 このような問題を理由に国家人権委員会も今年9月、韓国法務部(省に相当)に対し「少年法に定められた虞犯少年に関する規定」を削除することと、新たな解決策の取りまとめを勧告した。人権委は「虞犯少年を刑事特別法である少年法で規定する国は日本しかないはずだ」「国連の子供の権利委員会も虞犯少年制度の廃止を勧告した」と指摘した。法務部は「合理的な対策を検討中だ」と説明しているが、現時点で関係する規定は変更されていない。

 家庭のある子供たちは保護処分の中で最も厳しい少年院送致となった場合でも、その後家族の元に戻ればよい。しかし保育院などにいた子供たちは少年院に送致された後は行き先探しが簡単ではない。これも深刻な問題だ。保護処分の期間が終われば社会福祉施設に戻るのが原則だが、施設では「ほかの子供たちに悪影響を及ぼす」などの理由で入所を断るケースが多く、子供たちの側もこれらの施設には入りたがらないという。

 青少年幸福財団のユン・ヨンボム事務局長は「現状では施設への再入所を断った場合、その少年の取り扱いに関する指針もない状態だ」「保護処分を受けた子供たちが社会の死角地帯に追いやられ、やむなく犯罪の道に進むこともあり得る」と警告した。

ハン・イェナ記者、チェ・ジェウ記者

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