隠しカメラなどを使った違法なアダルトコンテンツの制作や配布の規制には誰も反対しないだろう。しかしHTTPS遮断の場合、夜にやって来る泥棒を警戒するため全国民を対象に通行禁止を命じたようなものだ。またその気になればVPN(仮想専用線)接続でいくらでも海外サイトにアクセスできるため、違法コンテンツを完璧に防ぐことはできない。最終的には何の成果もないまま「中国レベルのネット検閲国」と嘲笑されるだけだ。
未成年者に対しては認証の仕組みを使ってアダルトサイトへのアクセスを遮断し、違法なアダルトコンテンツの制作や配布に加わった人間には処罰を強化するやり方が合理的だ。尹大統領も候補者だった当時、いわゆる「n番部屋防止法」について「デジタル性犯罪などの凶悪犯罪は必ず根本的に遮断し、厳しく処罰しなければならない」とする一方「絶対多数の善良な市民に『検閲の恐怖』を与えてはならない」とも語っていた。
このように尹大統領は自由の価値をひときわ強調してきた。HTTPS遮断解除のハプニングも多くの市民が「ミス」ではなく「政権交代の結果」と誤って認識したのもそのためだろう。尹大統領は自らの価値観形成に最も大きな影響を及ぼした本として新自由主義経済学者ミルトン・フリードマンの『選択の自由』を挙げている。また就任演説では「自由」という言葉を35回も使用した。
文前大統領と共に民主党もかつて野党だった時代は「自由の守護者」を自認していた。2012年の大統領選挙で当時の文候補は「李明博(イ・ミョンバク)政権で韓国は『インターネット検閲国家』という汚名を着せられた」「大韓民国を必ずインターネット自由国家にしたい」と訴えていたが、実際に政権を握るとネットに対してより厳しい検閲を行うようになった。共に民主党議員らは野党時代に涙を流しながらテロ防止法に反対したが、与党になってからは法律改正の約束を無視した。誰よりも管理や統制を好む人間たちが口だけで「自由」を叫んでいたのだ。そのため「尹錫悦が語る自由」が果たしていかなるものか非常に気になるところだ。
チェ・ギュミン記者