【萬物相】日本人の清掃本能

【萬物相】日本人の清掃本能

 米国のベースボールが日本の野球と異なっている点は? 日本野球のヒーロー、イチローが答えた。野球の技術の問題ではなかった。「日本と違って米国のダグアウトはすごく汚い」。イチローは、野球の実力と同じくらいきれい好きなことで有名だ。靴底の泥をワイヤブラシでこそげ落とし、ユニフォームの毛羽を小さなハサミで取り除いてからフィールドに出た。「きれいなグローブで練習してこそ身に着く。汚かったら残らない」。だから、選手らが唾やヒマワリの種をところ構わず吐いてまわる米国のダグアウトは耐え難かったのだろう。

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 日本に着くと、多くの外国人が「きれい」という第一印象を受ける。まず道路がきれいだ。路上を走る自動車もきれいだ。トラック、工事車両まできれいだ。果ては清掃車すら光沢を帯びている。誇張ではない。黄砂や粒子状物質は韓国ほどひどくもない。だが何より、日本人は頻繁に掃除をする。工事現場の囲いの土ぼこりを作業員が小さなブラシで拭き払っている風景は、日本以外ではなかなか目にしない。「すぐまた積もるのになぜ払うのだろう。シャベルで作業でもしていればいいのに」。こう語る外国人も多い。

 起業家の松下幸之助は、日本政治に新たな血を供給するとして政経塾を作った。各界の最高の人材を集め、自由に勉強するようにしたが、掃除だけは義務だった。塾生全員が朝6時から30分間、政経塾全体を清掃した。日本は小学校のころから義務として掃除をさせられる。「掃除は全ての始まり」、こういう清掃文化に大きな影響を受けた人物が朴泰俊(パク・テジュン)だ。浦項製鉄を建設する際、彼が掲げた最初の鉄則が「工事現場の清掃と整頓、そして沐浴」だった。効果は大きかったという。

 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本の応援団の清掃風景が話題を集めた。最後まで残って競技場を掃除した。選手らも、自分たちが使ったロッカーロームをさっぱりと掃除して「ありがとう」というメモを添えた折り鶴まで残していった。ワールドカップが開かれるたびに繰り返されることだが、いつも話題を集める。他国の人々にとっては特別なことだからだ。

 「穢れ(けがれ)」は、日本の伝統文化を理解する上で中心的なキーワードの一つだという。建国神話で「穢れ」は死と悪を象徴する。始祖神すら、「穢れ」を洗い落とす沐浴の儀式を経て誕生する。日本人が掃除をするとき、ここまで考えてはいないだろうが、日本の清掃習慣はこうした神話が土俗宗教を通して日常生活に根を降ろした結果-という解釈もある。他人に迷惑をかけることを極度に警戒する共同体文化、常に他人の視線と評価に縛られる日本人の意識構造も影響が大きいという。まさに、日本人の「清掃本能」といえるだろう。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員

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