これに先立ち、アン会長は18年12月、キム・ソンテ元会長らと共に中国・丹東市で北朝鮮アジア太平洋委員会のキム・ソンヘ室長に会った。その席でキム・ソンヘ室長は「京畿道は北朝鮮の遅れた協同農場を『スマートファーム』に改良すると言ったが、まだ支援がない」として、サンバンウルに京畿道の代わりに費用50億ウォンの拠出を求めたという。検察はサンバンウルが北朝鮮にコネクションを持つアン会長を通じて対北朝鮮事業を進めたとみている。検察は起訴状でアン会長を「対北朝鮮事業ブローカー」と表現した。サンバンウルは19年5月、当時の李華泳(イ・ファヨン)京畿道平和副知事(起訴済み)、アン会長らの支援を受け、北朝鮮から鉱物開発など6分野の優先事業権が認められ、その代価を後日支払うことにしていたという。
一方、キム・ソンテ元会長は5月末、検察がサンバンウル本社を捜索する直前に海外に出国し、7カ月間逃亡生活を続けている。
本紙の取材を総合すると、サンバンウルの財経統括本部長として資金全般を管理していた「金庫番」A氏が韓国の法務部と検察の求めで最近タイ当局に逮捕されたという。A氏はキム元会長の義弟で、個人資金も管理していたという。
検察はA氏を「重要な捜査対象」とみている。キム・ソンテ元会長の逃亡資金もA氏が準備した可能性があり、A氏はキム元会長の行方も知っている可能性がある。ただ、A氏は現地の裁判所に送還拒否訴訟を起こし、帰国を拒否しているため、実際に帰国して検察の取り調べを受けるまでにはかなりの時間がかかる可能性もある。
法曹界からはキム・ソンテ元会長が最近、帰国に向けて韓国国内の法律事務所数カ所と接触しているとの話が聞かれる。しかし、法律事務所の大半が難色を示し、金元会長はまだ弁護人を見つけられずにいるという。サンバンウルの内部事情を知る関係者は「キム・ソンテ元会長が海外に逃亡し、持ち出した資金をほとんど使い果たしたと聞いた」とし、「元会長は事件の弁護を受任する法律事務所が見つかり次第帰国し、検察の捜査を受けるとみられる」と話した。
表泰俊(ピョ・テジュン)記者、イ・セヨン記者