■米国は今年4頭を返還
動物園側はフィンランド政府に500万ユーロ(約7億3500万円)を支援してほしいと要請しましたが、フィンランド議会は、自国の絶滅危惧種の保護にかかる費用よりも多い金額だという理由で反対したといいます。最終的に、リース期限まで10年以上も残したまま、早期返還を進めることになったのです。
フィンランド国内には、中国がパンダの早期返還を屈辱的なこととして受け止め、両国関係が悪化するだろうとみる専門家も少なくないといいます。
米国も4月に、20年のリース期間が終わった22歳の雌パンダ「ヤーヤー」(メンフィス動物園、テネシー州)を送り返す予定です。
年末には、スミソニアン国立動物園にいるつがいのパンダ「美香(メイシャン)」「添添(ティエンティエン)」と、2頭の間に生まれた「小奇跡(シャオチージー)」の計3頭が、契約期間終了に伴って中国に戻ります。1年で4頭のパンダが戻るというのは、米中関係がそれほど良くないという意味なのでしょう。
■「最高の外交官」として活躍
中国のパンダ外交は、中華民国時代から始まりました。故・蔣介石総統の宋美齢夫人が日中戦争当時の1941年、米国の支援に対する感謝の表れとして1つがいのパンダを米国に寄贈したのが始まりです。1946年には英国にもパンダ1頭を贈りました。
共産党も政権樹立後、外交においてパンダを積極的に活用しました。1972年に、当時のリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問すると、1つがいのパンダを友好の贈り物として米国に送りました。現在、世界19カ国に66頭が出掛けているといいます。韓国にも2016年、1つがいのパンダがやって来て竜仁のエバーランドで暮らしています。
専門の研究者らの分析を見ると、中国は徹底して国益と連携させてパンダを送っています。2012年にフランス政府と原発協力に同意すると、パンダ1つがいをリースしました。2011年にはスコットランドと貿易協定を結び、パンダ1つがいを送りました。
パンダが相次いで中国に戻ってくるのは、中国を取り巻く国際的状況と無関係ではないとみられます。習近平主席は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、周辺国を圧迫する攻勢的な外交を繰り広げてきました。新型コロナによるパンデミックの責任論、ウクライナ戦争を起こしたロシアに対する支援などで、国際社会においても事実上仲間外れになっています。香港民主化弾圧、新疆ウイグル族の人権じゅうりんなども物議を醸しています。パンダに象徴される中国のソフトパワーが作動する余地が事実上消えてしまい、「パンダ外交」の時代も終焉(しゅうえん)を告げたのです。
崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長