【寄稿】何が「愛国」を恥ずかしいものにしているのか

白人優越主義を掲げる米国の極右は自らを「愛国者」と呼び、中露の独裁者も「愛国」を掲げる

韓国は右派、左派がそれぞれ「愛国」を好き放題に変容させて利用

共同体の未来を考えるのが愛国…その本来の価値はどこへ行ってしまったのか

 米国で研修していたおよそ5年前、野球場にしばしば行った。試合開始前に国歌が演奏されると、観客はみんな立ち上がった。うっかり帽子を取り忘れたら「帽子を取らないと!」と声を上げる人が必ずいた。試合の中盤ごろには参戦勇士がフィールドに出てきてあいさつし、全員が起立して拍手を送った。普段は自分勝手な米国人が、「愛国」という価値の前では本当によくまとまるものだと思った。少なくとも、その時点ではそうだった。

 今、米国で「愛国」という単語は、その本来の意味からだいぶ離れた使われ方をしている。韓国で「民主化」や「太極旗」が本来の意味をほとんど失い、党派的に使われているのと似ている。ドナルド・トランプ前大統領を求心点とする極端な保守主義勢力は、自分たちのことを繰り返し「愛国者」と呼び、「愛国」を、極右を代表する単語へと変質させることに成功した。トランプは時折、極右の新党結成を図るが、その党名候補として最も有力なのが「愛国党」だ。

 4月に入って、グローバル社会は米国情報機関の機密文書流出事件で騒然となった。米国が韓国を含む友邦諸国の盗聴をしていたという内容などを含む文書がオンラインに流出し、波紋が広がった。いざ容疑者を逮捕してみたら、その正体は分別のない21歳の末端の兵士、ジャック・テシェイラだった。10代の友人らは米国メディアの前で、彼のことを「非常に愛国的な人物だった」と描写した。テシェイラ容疑者は平素から人種差別的、反ユダヤ主義的、白人優越主義的発言を好んで行い、「自分は米国を愛している」として射撃を楽しんでいたという。そんな行動を「愛国的」と称する社会が今の米国だ。白人優越主義に重きを置く「自称愛国者」の排他的かつ敵対的な思想は、「全ての人間は生まれながらにして平等」(米国独立宣言)に代表される米国という国家の本質を真っ向から裏切るものだ。

 極右が拉致したような格好の「愛国」に対する米国人の嫌気を示すアンケート結果が、先日明らかになった。ウォールストリート・ジャーナルのアンケートで「愛国心が重要」という回答が38%に過ぎなかったのだ。1998年に行われた同様のアンケートでは、回答者の70%が愛国心を「重要な価値」に挙げたが、それが半分になった。ニューヨーク・タイムズ紙は「愛国とはもともと、幾つか欠点があっても自分が属する国は良くなっていける、という信頼に基づく。だがこのごろの愛国は本来の意味から逸脱し、自分が認める部分は愛し、残りは全て憎悪するという二分法に固着化している」と分析した。

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