世界を席巻する民主主義の失敗、韓国は安全なのか【コラム】

「全体主義に圧勝」すると誰もが信じた自由民主主義が負けている
「自然災害と核戦争と同じくらい民主主義の消滅が恐ろしい」

 天安門事件30周忌を迎えた6月4日、中国当局による弾圧で追慕デモが跡形もなく消え去った香港の風景は、香港で民主主義の炎が今や完全に消えてしまったことを匂わせた。米国では大統領選挙での敗北に従わなかったドナルド・トランプ元大統領が最近検察により起訴(2件)され、あらゆるセクハラと虚構があからさまになった。しかし、同元大統領の(共和党内での)支持率は約60%と、むしろさらに上昇した。民主主義の守護国とされてきた米国も、国政が不安定であるということを物語る事例だ。

 フィナンシャル・タイムズの首席エコノミストであるマーティン・ウルフ氏は最近出版した書籍『民主的資本主義の危機』で「民主主義は現在、扇動的独裁にその座を奪われようとしている」と書いた。「ナチスの迫害を避けて米国に移民した(ユダヤ人の)両親は、民主主義が圧勝したという安堵(あんど)感の中、1990年代に永眠した。しかし、孫たちがいつの日か迎えることになる22世紀は、一体どんな世界だろうか。私は自然災害や核戦争と同じくらい全体主義がまん延する未来が怖い」。政治研究所である「民主主義の多様性」による集計結果、民主化が進行中の国は2002年の43カ国から昨年には14カ国へと大幅に減った。一方、全体主義化している国家は13カ国から42カ国へと急増した。何もウルフ氏だけの懸念なのではなく、自由陣営が本当に負け越しているのだ。

 自由民主主義は生まれつき危なっかしさを抱えている。「個人と思想の自由」のような抽象的価値よりも、味方をえり分けて扇動し合う全体主義的「憎悪の動力」が、さらに魅惑的であるためだ。民主主義の没落を懸念した経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは「民主主義がもし維持されるなら、少なくとも二つの条件を満たさなければならない」と書いた。政治家自身の高い資質と強固な官僚組織の構築だ。果たして韓国の民主主義は安全なのか。来年の総選挙を控え、今取り沙汰されている驚くべき人物の出馬説、そして公務員組織の根深い腐敗と無能に関するニュースを目の当たりにするたびに不安な思いに駆られるのだ。

キム・シンヨン国際部長

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