しかし事故発生から十数年が経過した今でも、政権与党を支持する極右的な反ロシアのカトリック民族主義者らの間では、ロシア陰謀論が支配的だ。ポーランドの民族エリートを抹殺するためにロシアのスパイが大統領機に爆弾を仕掛けた、というように。
陰謀論のむちゃくちゃな想像力は、ロシアのスパイが飛行機に接近するのは困難だから内通者が必ずいたはずで、それは誰か-という質問へとすぐに飛躍する。それがまさに、ポーランド民族をひそかに害しようとする外部勢力と結託した売国奴だという「正しい答え」が準備されている。
野党の主流である親西欧的なリベラルや社会民主主義者らは、「土着独寇」や「土着露寇」として追い込むには格好の存在だ。ポーランドの極右カトリック民族主義者らが開陳するこの民族主義陰謀論は、韓国の自称「進歩(革新)派」の人々が繰り広げる「土着倭寇」騒ぎと驚くほど似ている。
ポーランド極右のスモレンスク陰謀論は、韓国の自称左派が語る哨戒艦「天安」陰謀論とおかしなほど似ていた。彼らは、チベットや新疆ウイグルの少数民族に対する中国共産党の虐殺すら、帝国主義の陰謀や宣伝だと思っているらしい。「パンをくれ」と言って街頭に繰り出した労働者蜂起を西洋帝国主義の扇動や陰謀だと責め立てた、東欧各国の共産党の陰謀論とも似ている。
韓国極右の光州陰謀論も負けていない。反共主義者・池万元(チ・マンウォン)の「北朝鮮軍狂秀」説は、光州をはじめとする南の民主化運動は全て北が指導したという、北朝鮮の「民主基地論」とそっくりだ。彼は、自らの「北朝鮮軍狂秀」説が北の主張と同じ路線だということに気付くこともできないらしい。
陰謀論が、メディアに「くつわ」をかませて物を言えなくし、公論の場が活性化され得なかった独裁の遺産であることは明らかだ。だからと言って、陰謀論者らの知的怠慢を受け入れることはできない。彼らの想像する世界は、悪い敵のせいで世の中がこんなことになっているというマニ教的二分法から一歩も踏み出せない、小学校の世界史レベルだ。
自己省察的政治の地平に立つとき、敵の敵は味方ではなく、自分の敵でもある。
林志弦(イム・ジヒョン)西江大学教授(歴史学)