何も考えていない国民が暮らす「カブンゲ共和国」【朝鮮日報コラム】

脱原発、せき解体など政府省庁が先頭に立って「答えが決まっている」政策のためまい進
無能な専門家たちを集めて評価と指標を偽造、彼らは果たしてどんな国を夢見ていたのか

何も考えていない国民が暮らす「カブンゲ共和国」【朝鮮日報コラム】

 金大中(キム・デジュン)元大統領が太陽政策の一環として北朝鮮に対する電力支援を約束した頃、産業資源部(日本の省庁に相当)担当記者として活動していた。北朝鮮に対する電力支援の主務省庁が産業部だった。成功の可能性について担当公務員たちに聞いてみたところ、次のような回答が返ってきた。「北朝鮮も強く要請し、韓国政府も支援するとは言っているものの、容易に実現できる案件ではない。北朝鮮に送電施設を設置するためには、北朝鮮全域の電力事情から綿密に調査しなければならないが、これを北朝鮮が認めるわけがない。もしも急いで韓国側の提案を受け入れると言うなら、韓国にとっては好都合だ。全てにおいてお先真っ暗な北朝鮮事情を詳しく把握できるとすれば、北朝鮮に対する情報を蓄積できるチャンスになるだろう」。後任の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も国家予算への反映を進めるなど、北朝鮮に対する電力支援は左派政府がリードする中、かなりの期間にわたって議論されてきたが、専門性と信念を持った産業部の公務員たちの判断の方が正しかった。

 こうした産業部を記憶する元出入り記者の目に、文在寅政権時代の産業部は数十年にわたって積み上げてきた公務員の綱紀と能力を一つの政権がわずか5年の間にどこまで破壊してしまうのかをまざまざと見せ付けるきっかけとなった。前身の商工部は1948年7月17日、韓国政府樹立の際に設置された中心的中央省庁だ。1960-70年代に輸出主導の成長と重化学工業の育成という故・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の経済開発計画を先頭に立って指揮した主役だった。韓悳洙(ハン・ドクス)首相が産業部上がりであるように、エリート経済官僚の産室だった。国家主導の成長から抜け出し、民間経済が飛躍的に発展。産業部の地位も傾いてきたものの、所属していた官僚たちの専門性と自負心、国家経済に対する情熱はその後も長きにわたって受け継がれてきた。

 文政権初期にもこうしたDNAが全て消え去ることはなかったようだ。文政権発足後、脱原発政策に対して産業部は2030年までに毎年電気料金を2.6%ずつ引き上げなければならない、と2回にわたって「正しい発言」を行った。「(月城1号機)稼動中断はいつ決めるのか」という文大統領の圧力に当時のペク・ウンギュ産業部長官が早期閉鎖を指示したものの、担当公務員は永久停止の許可が出るまで「一時的稼動」の必要性を信念を持って報告した。しかし、担当公務員の判断に対し、長官が「そんなに死にたいか」と怒鳴り付け黙殺。直ちに「稼動中断」を強行した。こうした大統領と長官の下で、産業部の公務員たちは月城1号機の経済性評価を偽造するよう圧力を受け、原発生態系を壊す方向に積極的に乗り出した。早期閉鎖の違法行為を覆い隠すため、休日の夜中に事務所から関連資料数百件を削除する犯罪行為まで犯した。原発に代わって太陽光をむやみに拡大する政策に駆り立てられ、業者のロビー活動を受け入れたほか、その見返りとして金もうけに関わった産業部の公務員まで出てくる始末となった。これほどまで奈落に落ちてしまった産業部をこれまで見た試しがない。

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