-日本人の集団についての事件を映画にする理由は。
「以前、オウム真理教の殺人事件を取り上げたドキュメンタリー映画を作った。取材していて、オウム真理教の信者らが温和で善良だと分かり、衝撃を受けた。邪悪で凶暴な信者たちではなかった。障害者施設でボランティアをしていたある信者は『真に障害者の魂を救いたい』と悩んだ果てに『世界を救う』という教理を信じてオウム真理教に入った。福田村事件も同様だ。平凡な人が残酷なことをするとき、『集団』が一つのキーワードだ。集団に埋没するとき、暴走する。それが虐殺であり戦争だと思う」
-日本の観客が嫌がりそうなテーマだが、製作費はどうやって工面したのか。
「合わせて1億円ほどかかった。クラウドファンディングを通して2400人から寄付を受けた。配給会社など7社が一部を負担し、芸術文化振興基金から1000万円の助成を受けた。全ての日本人が見てくれればうれしい。このごろ『朝鮮人虐殺はなかった』と本気で信じる日本人が増えている。果ては『当時、朝鮮人が本当に井戸に毒を入れた』と信じる日本人もいる。それこそ、小池百合子都知事は朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送らなかった。安倍晋三政権時代から、日本にとって良くない話は『自虐史観』だとしてなかったことにしようという雰囲気が湧き起こった。南京大虐殺も、従軍慰安婦もなかったと。その理由は、善良な日本人がそういうことをするはずがない、というようなものだ」
-韓国ではいつ公開されるのか。
「韓国の幾つかの配給会社と接触しているが、公開が決まったところはまだない。昨年、釜山国際映画祭でプレゼンテーションをしたが、韓国人は誰も関心を示さなかった。みんな、関東大震災での朝鮮人虐殺をよく知らず、話をしても無関心だった。知人から『韓国人の間には、どうせ当時虐殺された朝鮮人は『パンチョッパリ(半分日本人という意味の蔑称)』だ、という認識がなくもない」という話を聞いた。衝撃だった。数千人に上る朝鮮人虐殺の被害者が、日本でも、韓国でも忘れられている」
成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長