中毒性はヘロインの50倍…中国発「新アヘン戦争」

中毒性はヘロインの50倍…中国発「新アヘン戦争」

【新刊】ベン・ウェストホフ著、チャン・ジョンムン訳『フェンタニル』(小宇宙刊)

 「容器の中は、化学物質が入った1キロ分のジッパーバッグでいっぱいだった。その大変な量は、小さな国であれば国全体を麻薬に酔わせるに足るほどだった」

 米国の調査報道記者である著者は、2018年に上海の外郭で目撃した実験室の風景をこのように描写した。かつて列強が持ち込んだアヘンにむしばまれた中国が、今度はフェンタニルの類似物質を合成して西欧に輸出する「新アヘン戦争」の現場だった。

 1959年にヤンセンによって鎮痛剤として開発されたフェンタニルは、今や米国の18-49歳の死亡原因トップだ。中毒性がヘロインの50倍もあるこの新種の麻薬は、実験室で合成するもので原料作物は必要なく、少量ずつ流通するので探知が難しい。取り締まり機関が対応に乗り出しても、製造業者は化学組成だけをたやすく変えて網をすり抜ける。

 本書はフェンタニルの登場と製造・流通の過程を暴き、麻薬と戦う人々の努力を紹介する。このために麻薬中毒患者、売人、政策立案者など160人にインタビューし、数百件の文献を検討した。麻薬商人を装って中国の製造実験室に潜入する場面は、サスペンス小説を思わせる。

 韓国国内でも最近、通り魔事件の犯人が「フェンタニルを服用した」と供述し、フェンタニルを違法に処方した医師が身柄を拘束された。「フェンタニル禍はよその国の話」とは言えない現実が苦々しく迫ってくる。444ページ、2万ウォン(約2200円)

チェ・ミンギ記者

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