中国は陸上の道路・鉄道網の構築にも拍車をかけている。国有企業である中国鉄建は21年から22年にかけ、14億5100万ドルを投じ、チリ中部の高速道路(354キロ)の32年間の事業権を確保した。中国企業はチリの首都サンティアゴの地下鉄7号線とコロンビアの首都ボゴタの地下鉄1号線の受注にも相次いで成功し、鉄道建設でも成果を上げた。アジア、アフリカ各地に港湾、道路、鉄道などインフラを構築し、自国の経済的影響圏を拡大した一帯一路事業と似た方式を取っている。
中国が中南米の一帯一路を通じ、軍事的影響力まで高めようとしているとの観測もある。そうした懸念の呼び起こしているのが中国人民解放軍傘下の中国衛星発射追跡制御総局(CLTC)が管理するアルゼンチン中西部のネウケン宇宙基地だ。アルゼンチンは1991年に宇宙活動委員会を設置するなど宇宙政策を積極的に展開してきたが、最近中国との協業が目立つ。特にネウケン宇宙基地は「基地で遂行される活動を干渉したり妨害しない」という両国政府の契約に基づき、秘密裏に運営され、中国のスパイ活動、その他軍事活動に対するうわさが増幅されている。ベネズエラ、ボリビアなどにも人民解放軍と連携した国有企業が運営する10カ所余りの衛星基地がある。
こうした基地は事実上、中国の諜報施設ではないかと懸念されている。実際に中国の研究陣は19年、スウェーデンが運営するチリのサンティアゴ衛星基地で軍事目的の活動を行ったと疑われ、退去させられた前歴がある。米戦略国際問題研究所(CSIS)は「南米にある中国の地上宇宙基地は米国に近く、米国の資産を監視し、敏感な情報を収集するのに使われる恐れがある」と指摘した。
こうしたケースが明らかになり、中南米各国では一帯一路に対する警戒の声も出始め、事業が保留される例も出ている。アルゼンチンでは最近、陝西化工集団が南米最南端のティエラデルフエゴに12億5000万ドルを投資し、石油化学団地を含む多目的港を建設するプロジェクトが契約成立直前に保留となった。中国は南極へのアクセスが優れているという地政学的重要性を着目していたが、国家安全保障に重大な脅威になりかねないという反対世論が噴出した。
ブエノスアイレス=ソ・ユグン特派員