「今の中国は毛沢東政権の復活…世界を説得し得る普遍的理念を作り出す能力も意思もない」

「悲しき中国」3部作を刊行したカナダ・マクマスター大学の宋在倫教授

 これは「過去の事件」にはとどまらない、と宋教授は語った。ちょうど昨年、中国では1億人以上が数カ月にわたって拘禁される、いわゆる「大陸封鎖令」の残酷な光景が展開した。ソウルと京畿道の全人口に近い上海一帯の2600万人が、習近平1人の命令によって5カ月以上も家から出られず、それがまさに「いまの中国」だという。「もし韓国政府が首都圏の人口を封鎖したら、すぐに政権が変わるのではありませんか?」

 宋教授は、こんにちの中国の実体を冷静に見るべきだと語った。「人口14億の個々人の生体情報をビッグデータとして集積し、国内全域に監視カメラを配して人民の一挙手一投足を監視する国」だという。「表現の自由や思想の自由はもちろん、信教や居住・移転の自由も満足に保証されません。共産党独裁を批判する知識人は結局、耐えられずに政治的亡命をするか、口を閉ざすしかありません」

 しかし宋教授が見るに、あまりに多くの韓国人が中国に対して誤った幻想を抱いている。甚だしい例では、「いずれ米国を打ち破って新たな世界秩序を構築するだろう」という見方まで出ている。「こうした韓国知識人らの親中傾向は、根深い反西欧主義と反米意識、社会主義傾向、伝統的慕華思想の影響だといえます。一党独裁を超えて一人独裁へと進むこんにちの中国を作ったのは、1949年以来の中国の暗い現代史ですが、これを理念的に美化し、政治的に称賛してよいのでしょうか」

 宋教授が見るに、今の中国には世界を説得し得る普遍的理念を創出する能力、意思、論理がない。「今の習近平政権は毛沢東政権の復活であって、理性のまひ、独断的な時代錯誤、狂気の大逆進が繰り広げられている」という。最近のコロナ・パンデミックは、中国という全体主義国が世界にとってどれほど大きな脅威となっているかを悟らせる、決定的な契機だった。宋教授は「この先、退屈な新冷戦の持久戦が続く可能性が高いが、その点故に中国の不合理な体制について冷徹な批判が必要」と語った。

兪碩在(ユ・ソクチェ)記者

【写真】宋在倫教授

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