せっかちな歓喜セレモニー【萬物相】

 米国で数年前、3000メートル走に出場した選手が1位で走っていた時、ゴールラインの数十メートル手前から観客席に向かって手を振るセレモニーを行った。10メートル以上遅れて走っていた他の選手がこれを見て全力疾走し、ゴールラインの2メートル前で追い抜いた。優勝を奪われた選手は目を手で覆ったまま、うなだれた。動画共有サイト「ユーチューブ」上には気の早いセレモニーをして失敗したスポーツ競技の動画が多数掲載されている。サッカーのPKがゴールポストに当たって跳ね返ったため、GKが歓喜のセレモニーをして、ゴールポストを空けた。ところが、はじけたボールにスピンがかかり、ガラ空きのゴールに入るや、今度はPKに失敗したと落胆していた選手が歓喜するという動画もある。

【写真】0.01秒差…まさかの逆転を許した「歓喜セレモニー」

 杭州アジア大会ローラースケート男子スピード3000メートルリレー決勝に出場した韓国代表チームが、ほぼ手中にしたと思われた金メダルを逃した。レース中ずっと先頭を走っていたが、ゴールを通過する瞬間だけ先頭を譲った。その差は0.01秒だった。アンカーがゴール直前に両腕を上げて「金メダル・セレモニー」を早々とやってしまったのが災いの元だった。逆転優勝を果たした台湾の選手は「相手がセレモニーをしている間も依然として私は戦っていたという事実を言ってやりたかった」と語った。

 今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)オーストラリア戦での逆転負けのきっかけも気の早いセレモニーだった。2塁打を打った韓国の選手がダッグアウトに向かって手を上げる歓喜のセレモニーをしていたところ、ベースから足が離れた。その時、オーストラリアの二塁手が待っていたかのようにタッチアウトにした。試合後のインタビューでオーストラリアの選手は「もしかしたらアウトにできるかもしれないと思った」と言った。性急に判断せず、一瞬にベストを尽くしたことが違う結果をもたらした。サッカー韓国代表を務めたFWも、欧州リーグで同様のミスを犯した。シーズン初ゴールを決めて宙返りをして膝を痛めて交代し、FWを失ったチームは逆転負けした。

 多くの選手が優勝の瞬間を思い描きながらセレモニーを練習する。セレモニーを練習する中で汗と苦痛に立ち向かう力を得ることもある。2008年の北京五輪で、李竜大(イ・ヨンデ)がバドミントン混合ダブルスで金メダルを取った後、カメラに向かってした「ウィンク・セレモニー」は今も多くの韓国国民の心に「ステキなセレモニー」として残っている。

 「セレモニー」の魅力はカッコいいジェスチャーではない。その直前まで選手が自分のすべてを注ぎ込んだエネルギーの慣性によっておのずと続く動作に、観衆は自然に歓喜の声を上げるのだ。フィニッシュラインを切ろうと走り込んできたスプリンターが胸を張って喜ぶ姿は、それ自体が美しい。ベストを尽くした後に得た成果を祝うセレモニーなら、国民も一緒に祝ってくれるだろう。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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