国家スポーツ暴力団【萬物相】 杭州アジア大会

 映画やドラマに出てくる悪役のキャラクターをビラン(villain)と呼ぶが、国際的なスポーツイベントでは北朝鮮がまさにビランだ。北朝鮮のビランの歴史は北朝鮮が初めて夏のオリンピックに参加した1972年のミュンヘン大会にさかのぼる。この大会の射撃男子50メートルのスモールボア・ライフルでリ・ホジュンが北朝鮮で最初の金メダルをもたらしたが、彼は直後のインタビューで「米帝の心臓を見て撃った」と語った。世界のスポーツ界は衝撃を受けた。

【写真】女子サッカー準々決勝で韓国を「かいらい」と表示した朝鮮中央テレビ(9月30日)

 スポーツの試合で選手たちが興奮し暴力が起こるケースはたまにあるが、北朝鮮は常習犯だ。おそらく北朝鮮国内では暴力を起こしても特に問題にはならないのだろう。1982年にニューデリーで開催されたアジア大会男子サッカーで北朝鮮代表は準決勝で敗れたが、試合直後に審判を集団で暴行し頭から出血させる事態となった。バンコク大会では男子バスケットボール選手が審判の胸をつかんで持ち上げる様子がリアル中継された。

 北朝鮮選手の暴力性は平壌では極限に達する。海外チームに敗れることは容認できないため、試合では暴力も利用される。2011年に平壌で北朝鮮と対戦したサッカー日本代表は警察の監視を受ける恐怖の雰囲気の中、一人で寝るのも怖いという理由でホテルでは2人で寝た選手もいたという。試合では激しいタックルを受けながら負傷しないことに神経を使ったそうだ。2019年に平壌で無観客・テレビ中継なしで試合し帰国したソン・フンミンも「けがしなかっただけで大きな収穫」と述べた。韓国選手たちは、北朝鮮の警察官3人が30メートル間隔で配置されたホテルに、事実上隔離された。持参した肉などは没収され、のりとキムチしか食べられなかったという。北朝鮮では観衆の暴力性も選手と同じだ。平壌で行われた2006年のサッカー・ワールドカップ予選で北朝鮮がイランに敗れた直後、イラン選手たちが会場の外に出るのを数万人の観衆が1時間にわたり妨害した。イラン選手たちは死の恐怖を味わったそうだ。

 中国杭州で開催されているアジア大会女子サッカーの試合を中継した北朝鮮のテレビは韓国チームを「かいらい」と表記した。テレビ中継まで暴力的だ。男子サッカーの準々決勝で敗れた北朝鮮選手は日本のスタッフに殴りかかるそぶりを見せた。日本の新聞各紙は「北朝鮮選手団の主要なターゲットは韓国と日本だ」と報じた。

 コロナの影響で国際社会から姿を消していた北朝鮮のスポーツ選手たちが復帰し、彼らの暴力的な行動が改めて注目を集めている。「さらにひどくなった」という指摘もある。旧韓末に日本人が韓半島を回って書いた『朝鮮雑記』は朝鮮を「井の中のかわず」と表現したが、今の北朝鮮はその朝鮮時代の閉鎖性がそのまま残っている。その北朝鮮でスポーツは金氏王朝を称賛する手段だ。負けるのは嫌だが実力が追い付かないとなれば、結局後に来るのは暴力だ。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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