実はこの動画はもともと、エジプトの大学の政治イベントで企画された「模擬遺体」の動画だった。今回のイスラエル軍の空襲で死亡したパレスチナの住民の遺体ではない上、「アルジャジーラのテレビで放映」と言っていること自体がフェイクニュースなのだ。イスラエル軍の蛮行を告発するためのフェイク動画でもなく、そもそもの説明が誤っていたのだ。
2013年10月にエジプト・カイロのアル=アズハル大学で、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」に所属する学生らが、同年7月にエジプト軍部に追放されたエジプト大統領ムハンマド・モルシ氏の圧政を批判するイベントとデモを行った。学生らは総長室前の道路を占拠し、モルシ政権時代に殺害されたムスリム同胞団員らの復権を求めて「模擬遺体」を並べるパフォーマンスを行った。これは当時、ロイター通信や英国BBCなどでも報じられた。つまり、もともと偽物の遺体を並べるイベントだったわけで、その趣旨も、ガザ地区の住民の悲惨な状況を告発するという目的とは無関係だったのだ。
一方、10月27日には、イスラエル軍の空襲によって死亡したガザ地区のパレスチナ住民だという人物が、遺体を収容する袋に入った状態で座って「奇跡的に」スマートフォンでメッセージを送る写真が公開された。そのため、再び陰謀論が駆け巡った。この写真には「死んだ人間がメッセージを送る姿を見たことがあるか。ガザではどんなことも可能なようだ」という説明が付けられていた。
しかし、この写真も実は、2022年10月にタイで行われたハロウィーン仮装大会で撮影されたものだったという。この写真はその後、「スマホでメッセージを送るパレスチナの犠牲者」というタイトルで、イスラエルとハマスの衝突が起きるたびにSNSに登場している。実際には今回のイスラエルとハマスの紛争とは無関係だ。
イ・チョルミン国際専門記者