北朝鮮に勝訴から半年で…脱北した韓国軍捕虜キム・ソンテさん死去　91歳

　韓国戦争（朝鮮戦争）時、北朝鮮に捕まり炭鉱などで数十年間にわたり強制労働をさせられた後、脱北した韓国軍捕虜キム・ソンテさんが1日、死去した。91歳だった。北朝鮮を相手取り起こした損害賠償請求訴訟で勝訴してから半年後のことだ。

　キム・ソンテさんは韓国戦争時、負傷した戦友をおぶって移動していたところ、迫撃砲の破片に当たって北朝鮮軍に捕らえられ、捕虜となった。その後、炭鉱などで数十年間にわたり強制労働をさせられ、2001年に脱北した。脱北後、2020年に他の韓国軍捕虜と共に北朝鮮政権を相手取って訴訟を起こし、2年8カ月後の今年5月に一審で勝訴判決が出た。裁判所は「北朝鮮はキム・ソンテさんらに強制労働をさせ、抑留した反国家団体であり、北朝鮮のこうした行為はキム・ソンテさんらに苦痛を与える違法行為だった」として、原告らに慰謝料5000万ウォン（約560万円）ずつを支払うよう命じた。

　キム・ソンテさんは勝訴後の記者会見で「今日のようにうれしく、意義深い日のために祖国に帰ってきたが、両親と兄弟たちは皆、この世を去っていて、会うことができなかった」「私は死ぬ日まで大韓民国のために戦う。勝訴して得た賠償金はすべて国にささげようと思う」と述べた。当初、この裁判の原告はキム・ソンテさんを含め計5人だったが、裁判が2年半以上遅れる間に3人が死亡した。

　1994年の故チョ・チャンホ少尉の帰還を皮切りに、計80人の韓国軍捕虜が韓国に戻ってきたが、キム・ソンテさんの死去により、現在、韓国国内で生存している脱北韓国軍捕虜は10人になった。その大半は90代だ。キム・ソンテさんの祭壇は韓国軍首都病院葬儀場に設けられた。出棺は3日午前に予定されている。埋葬地は国立ソウル顕忠院だ。

キム・ミンソ記者