「高麗連邦制」を通じた対南吸収統一、50年の幻想から目覚めた北朝鮮【寄稿】

 連邦制統一案が掲げる「1国家2体制」論理の重要な試金石だった香港の民主主義が、中国共産党によって踏みにじられた状況で、弱り目にたたり目で民族問題に無関心なMZ世代( M〈ミレニアル〉世代とZ世代を合わせた1980-2010年ごろまでに生まれた年齢層)まで登場したことで、高麗連邦制は一切考慮されなくなった。韓国国内の親北勢力にも、もはや北朝鮮問題は単なる政治的手段に過ぎず、余生を北朝鮮で過ごしたり、子どもを北朝鮮に留学させたりする人は誰もいない。彼らが北朝鮮に提供してきた経済援助も国連制裁により遮断され、北朝鮮が千辛万苦の末に成し遂げた核武装も、韓国に対する北朝鮮の優越性を保障することはできなかった。何気ない歳月の変化の中で、ただ北朝鮮当局だけが対南吸収統一というむなしい妄想を抱いてきたに過ぎない。

 そんな中、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は新年早々、対南談話文を通じて韓国を「大韓民国」と称し、南北関係を民族関係ではなく「敵対的国家関係」と規定。金正恩(キム・ジョンウン)総書記は韓国を「主敵」と称し、韓国が武力使用を企てたり、北朝鮮の主権と安全を威嚇したりすれば、即座に武力を総動員して焦土化すると警告した。このような北朝鮮の動きは、対南脅威というよりは、高麗連邦制に伴う対南吸収統一という幻想の「終わり」を合理化すると同時に、韓国による吸収統一の可能性に対する隠れた恐れを表出したものと見える。

 北朝鮮によるこうした対南政策の変化は、韓国の対北政策にも重要な示唆点を与えている。韓国は自由民主体制での平和統一を追求してきたが、分断国が合意による平和統一を成し遂げたケースは人類史上前例がない。核武装した北朝鮮が、いくら深刻な経済難に直面しても、自ら共産体制を投げ捨てて投降する可能性もない。高麗連邦制が非現実的だったように、韓国の統一政策も現実化する可能性は低いと思われる。そのため、もはや韓国も南北関係を曖昧な特殊関係として扱うよりは、むしろ国家同士の関係として確立し、国際法を適用することが、南北協力と安保管理にとってより効果的だ。かつて分断時代の東西ドイツの関係も、両国の外交部(日本の省庁に当たる)の管轄する国家間の関係だったが、これはドイツ統一に向け何らの障害にもならなかった。

李容濬(イ・ヨンジュン)世宗研究所理事長・元外交部北朝鮮核大使

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