フィリピン国家捜査局は先月20日にも、軍事基地や警察署などを偵察して写真などの資料を収集した疑いで、中国人の鄧元清容疑者とフィリピン人2人を逮捕したと発表した。鄧容疑者は中国人民解放軍の陸軍工程大学を卒業したコンピューターエンジニアで、5年以上フィリピンに居住していたという。
容疑者らは「自動運転開発車両」と表示した車を運転しながら、さまざまな資料を収集していたという。押収した車を捜索したところ、目標とするインフラ施設に関する3D画像生成プログラムやGPS(衛星航法システム)など、各種の情報収集機器が見つかったという。容疑者らはすでにルソン島地域の偵察を終えた状態で、その後、中部ビサヤ諸島や南部ミンダナオ島などへと偵察範囲を拡大する予定だったことが分かった。
鄧容疑者のスマートフォンからは、あるペーパーカンパニーに定期的に170-1200万ペソ(約450万-3200万円)を送金していた形跡が確認され、フィリピン国家捜査局は黒幕に中国のスパイ組織が存在しているとみて捜査を進めている。今回パラワン島の軍基地を撮影して検挙された中国人らと連絡を取っていた痕跡も見つかった。それぞれが別のグループではなく1つのグループとして動いていた可能性があるというわけだ。
フィリピン軍当局は、鄧容疑者がフィリピン国内の米軍基地を標的にしてスパイ活動を行っていたとみている。フィリピンは2014年、米軍の航空機や軍艦などを自国の軍事基地に配備できるようにする防衛協力強化協定(EDCA)を米国と締結したが、この協定に基づいて米軍が使用しているフィリピンの軍事基地が、スパイの情報収集の対象になったというわけだ。ロミオ・ブラウナー陸軍参謀総長は「地表の目印や地形を整理し、軍事目的で活用しようとしたようだ」と述べた。
ルソン島内のフィリピン空軍基地と海軍基地などには、南シナ海と台湾海峡で発生し得る衝突などの有事に備え、米軍が中距離ミサイル発射システム「タイフォン」の発射台などを配備してきた。クラーク空軍基地には米空軍のステルス戦闘機F22が配備されたこともある。
鄧容疑者の事件が明るみに出た直後、中国は敏感に反応した。中国外務省の毛寧報道官は先月22日の記者会見で「中国は海外に住む自国民に対し、現地の法律や法規を順守するよう一貫して求めてきた。フィリピンが根拠のない憶測に基づいて、(検挙された者たちを)中国のスパイだと大々的に宣伝する行為をやめるよう求める」と述べた。一方、パラワン島の事件については、これまで特に立場を示していない。
韓国、フィリピン、米領グアムなどを対象に、中国があらゆる方面でスパイ活動を行っている状況が次々と明らかになったことで、米国は懸念の声を上げている。米国務省の報道官は先月28日、米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に寄せたコメントで「我々は米軍兵士の安全と安全保障の問題を深刻に考えている」と述べた。これは、中国によるアジア・太平洋地域でのスパイ活動を、米軍に対する脅威と見なしていることを意味している。
崔有植(チェ・ユシク)中国専門記者