事実検証で揺らぐ「内乱」の構図【朝鮮日報コラム】

政界の介入と軍・国情院幹部の誇張された陳述

「戒厳=内乱」が確定事実であるかのように韓国国民の認識の中に刻まれた

 戒厳軍側の証言も微妙に変わった。尹大統領が「国会議員」を「引っ張り出せ」と指示した…と証言していた郭種根特戦司令官は、憲法裁判所の証言で、「人員」を「連れて出てこい」という指示だったと修正した。特戦司のキム・ヒョンテ特任団長は「国会議員」と「引っ張り出せ」という単語は指示になかった、と言った。キム団長は戒厳直後、「人員を捕縛するケーブルタイ」を携帯したと明かしていたが、2カ月後に「国会の門を封鎖する目的」だったと証言を覆した。検察の起訴状に「扉をおので壊してでも引っ張り出せ」という指示を受けたと記載されていた李鎮遇首防司令官は「逮捕の指示はなかった」とし、起訴状の内容のほとんどは自分の言ったことではないと否定した。

 「逮捕リスト」を暴露した洪壮源国情院次長は、「汚染されたメモ」論争を自ら招いた。呂寅兄(ヨ・インヒョン)防諜司令官から逮捕対象を伝達された際に話を聞きながら書いたとしていたメモが、原本ではないことを白状した。後で記憶を思い出しつつ補佐官に書き写させ、自分が加筆したメモであって、原本は捨てたという。呂防諜司令官は、洪次長への連絡で「逮捕」という言葉は使わなかったと主張した。全国民に衝撃を与えた「李在明・韓東勲逮捕」疑惑にひびが入ったのだ。

 民主党は足抜けをしつつある。尹大統領と韓悳洙(ハン・ドクス)首相に対する弾劾訴追案において「内乱罪」の部分を撤回する、と後ずさりした。内乱罪は二人の弾劾訴追の絶対的事由だったのに、これを削除するのであれば国会の議決からやり直すべきだ、という声が上がることは避けられない。「政治家逮捕」「国会まひ」が既定事実化される中で強行された現職大統領の逮捕・勾留もまた、どうなるのか。

 12・3戒厳は憲法上の要件に合わず、手続きに違反し、違憲・違法の要素は大きい-という点には、大部分の専門家が同意している。しかしこれが憲法上の内乱罪に該当するかどうかは、別の問題だ。占領軍のように振る舞う政界の介入と、軍司令官らの誇張された証言が、「内乱フレーム」を既成事実にした。争いの余地がある事案を不動の事実であるかのように刻み込むことで、政局の流れと司法手続きを歪曲(わいきょく)させた。今からでも、冷静であるべきだ。

朴正薫(パク・チョンフン) 論説室長

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲洪壮源・元国情院第1次長のメモ。/憲法裁判所の弁論映像より

right

あわせて読みたい