2020年の国会議員総選挙以降、選挙無効訴訟は約180件に達するが、大法院(最高裁判所)が関連疑惑を事実だと認めたことはない。ところが、尹大統領は非常戒厳宣布直後に公表した肉筆の原稿で「不正選挙の証拠はあまりにも多い」と主張した。また、尹大統領は先月、憲法裁判所の弾劾審判弁論に出廷した際、「事実を確認しようという見地から証拠を確保するため、非常戒厳を宣布した」と述べた。裁判所の裁判過程で、疑惑を完全に払拭できるほどの証拠調査など、十分な審理が行われていなかったとの主張だとみられる。
これについて、野党側は「非常戒厳宣布を正当化するために不正選挙説を主張している」と言っている。選管も「組織的な不正選挙は不可能だ」としている。だが、疑惑を提起する側は「選管が投開票システムに対する全面調査を許可したことはない。選管が選挙無効訴訟で提出した統合選挙人名簿コピーも選挙人の氏名・住所が削除されており、彼らが実際に投票したのかどうかの確認・検証は不可能だ」と主張する。法曹界のある関係者は「尹大統領は以前、『不正選挙疑惑は変革的な状況でなければ究明が難しい』という趣旨の話をしたことがある」と言った。選管委員長を現職の大法院判事が務めており、また政界における選挙の勝敗が絡んでいる事案なので、不正選挙疑惑を監査院や検察が全面的に調査したり、選挙訴訟によって確認したりするのは容易ではない、という意味だ。
こうした中、非常戒厳宣布以降、「不正選挙疑惑に関して真相を解明する調査が必要だ」という世論も広まっている。朝鮮日報がケースタット・リサーチに依頼して先月21日と22日に実施した世論調査によると、全回答者の43%が「不正選挙疑惑に共感する」と答えた。2年前の週刊朝鮮・現代リサーチによる世論調査では、回答者の38.2%が「選挙操作はあったと思う」と答えた。朝鮮日報とケースタット・リサーチの調査で「保守派」だという回答者のうち70%、「与党・国民の力の支持者だ」という回答者の78%が「不正選挙疑惑に共感する」と答えた。また、40代の回答者で「共感する」と答えたのは31%、「共感しない」と答えたのは69%だった。一方、20代では「共感する」が48%、30代では「共感する」が41%だった。
イ・ミンソク記者、李世永(イ・セヨン)記者