生前のキム・セロンさんは「インスタグラム」など交流サイト(SNS)での活動が活発だった。だが、キム・セロンさんが投稿するたびに、「SNS病の末期患者」「精神年齢が低すぎ」などの誹謗中傷コメントが寄せられた。17日に弔問した知人のチャ・ヒョンジュンさん(25)は「キム・セロンさんは一見、とがっているように見えるが、心の中はとても前向きだった。SNSに写真を1枚載せるだけでも誹謗中傷コメントが寄せられるのを見て、気に病みながらも表には出さなかった。それなのに、このように虚しく逝ってしまった」と語った。チャ・ヒョンジュンさんはキム・セロンさんと約1年前、あるカフェで一緒にアルバイトをして知り合ったという。
キム・セロンさんは昨年4月、舞台で女優復帰を試みたが、世論の非難により水の泡となった。昨年11月、低予算映画『ギターマン』の撮影を終え、名前も「キム・セロン」から「キム・アイム」に改名して復帰を打診した。知人たちは「改名した後も芸能活動やカフェのオープンなどさまざまな準備をしていて、精神的・心理的な治療も受け続けていた」と話す。 映画『ギターマン』は今年5月に公開されるが、これがキム・セロンさんの遺作となってしまった。
警察によると、遺書は見つかっていないとのことだ。心停止状態のキム・セロンさんを発見した人は、事件当日にキム・セロンさんと会うことを約束していた友人だった。警察は「外部から侵入があった形跡など、犯罪が疑われる点は確認されていない。単純変死(事件性がない死亡)として終結することになる」と語った。
米イェール大学医学部精神医学科のナ・ジョンホ助教授は17日、SNS「フェイスブック」の自身のアカウントに「失敗したり、落ちぶれたりした人を捨てて、何事もなかったかのように通り過ぎる韓国社会の姿は、まるで巨大な『イカゲーム』のようだ」と言った。ソウル大学心理学科の郭錦珠(クァク・クムジュ)名誉教授は「誹謗中傷コメントは単なるコメントではなく、『ナイフで1回ずつ人を刺す行為』だ。このような状況に置かれた有名人はとてつもない無気力と恐怖に陥ることになる」と語った。
キム・セロンさんのファンたちは同日、「キム・セロンさんは自らの過ちを認め、反省し、再び立ち上がるために努力したが、彼女が耐えなければならなかった非難と無視は人間的な限界を超えていた」という追悼声明文を発表した。歌手MIGYO(ミギョ)は「人が死ななければ誹謗中傷コメントを書く人の手は止まらない」と語った。
安重顕(アン・ジュンヒョン)記者、チョ・ミンヒ記者、アン・テミン記者