ソウル中央地裁が7日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の勾留取り消し決定を下したことを受け「尹大統領の弾劾審判も弁論を再開すべきだ」との声も高まっており、これに憲法裁判所も当惑しているという。表向きは「勾留取り消しと弾劾審判に関連性はない」としているが、宣告のみ残す憲法裁判所としては想定外の変数が生じた形だ。法曹界からは「弁論再開までは実現せずとも、宣告は先送りされる可能性が高まった」との見方も相次いでいる。
【写真】「カムサハムニダ!」 保釈され支持者の前で頭を下げる尹大統領
憲法裁判所は2月25日に尹大統領弾劾審判の弁論を終結し、その後はほぼ毎日評議を行い事件について検討を続けている。過去の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領や朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領の弾劾審判では弁論終結から約2週間後の金曜日に宣告が下された。そのため憲法裁判所周辺では尹大統領の宣告日について「3月14日」が有力視されてきた。
■「公捜処の捜査記録は証拠から排除すべき」
裁判所が尹大統領の勾留取り消しを決めた主な理由は「捜査と起訴の過程で適法な手続きが守られなかった」というもの。しかし憲法裁判所は裁判所が「問題あり」と判断した捜査記録を証拠として採択し検討している。与党・国民の力の朱晋佑(チュ・ジンウ)議員は同日「大統領弾劾審判も弁論を再開し、公捜処の不法な捜査に基づく証拠を除く作業をすべきだ」と主張した。
これまで尹大統領の弾劾審判を進めてきた憲法裁判所が手続き上の問題を複数起こしたことも改めて注目されている。憲法裁判所に対しては、検察調書の証拠採択と証人尋問時間の制限、尹大統領の直接尋問禁止、選別的証人採択など、裁判手続きを巡る批判の声が今も絶えない。
中でも韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾審判など、先に終結した事件を後回しにし、大統領弾劾の結論を急ぐかのような動きには尹大統領の弁護団や与党などが強く反発している。ある大手弁護士事務所所属の弁護士は「宣告が多少遅れたとしても、憲法裁判所は弁論を再開し、手続き上の問題を解消することが望ましい」「内乱行為で大統領を弾劾しておきながら、後から裁判所で控訴棄却や無罪が宣告されれば、憲法裁判所はどう責任を取れるのか」と指摘した。
これに対して今回の勾留取り消しが弾劾審判に大きな影響はないとの見方も根強い。かつて憲法研究官を務めたある弁護士は「勾留取り消しは弾劾に決定的な影響を及ぼす理由にはならない」との見方を示した。