また、バイデン政権が今回の決定を下した2024年12月から2025年1月にかけては、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の戒厳宣言宣布と弾劾政局の渦中にあり、韓国で核武装論が立ち消えとなっていた状態だった。それにもかかわらず、野党では別途の事実確認手続きをすることもなく、これを核武装論の主張による「外交惨事」と規定し、「韓国国内の核武装論に対する深い疑問と問題意識が米国国内にあったため」(魏聖洛〈ウィ・ソンラク〉共に民主党議員兼李在明〈イ・ジェミョン〉代表外交安保団団長)、「無責任な核武装論の提唱が現在の状況を招いた主な原因だ」(金峻亨〈キム・ジュンヒョン〉祖国革新党議員)、「独自の核武装という非常にゆがんだ欲望を持った尹錫悦政権を信頼できなかったということ」(崔鍾建〈チェ・ゴン〉元韓国外交部次官)と政治スローガンを並べ立てている。元韓国外交部高官は「民主主義国家の友邦国において、政治家や学者、メディアが核武装について多少語ったからといって、これを制裁するというのはナンセンスだ」と言った。
バイデン政権の主要当局者は、拡大抑止(核の傘)を超える韓半島(朝鮮半島)戦術核再配備、北大西洋条約機構(NATO)式核計画・共有などに否定的な立場を取っていた。しかし、トランプ政権になってからワシントン周辺や民間の間では、北朝鮮の核・ミサイル暴走の渦中において韓国の核オプション(核武装するかどうかの選択の自由)を一部議論できるというムードが感知されている。米共和党所属の上院外交・安保ツートップであるジム・リッシュ外交委員長とロジャー・ウィッカー軍事委員長は昨年から「徐々に増している北朝鮮の核の脅威の中、韓国に核兵器を再配備することも考慮可能だ」と主張してきた。J・D・ヴァンス副大統領の側近で米国防総省次官(政策担当)に指名されたエルブリッジ・コルビー氏も「中国との軍事的な均衡のために韓国の独自の核武装まで考慮したあらゆるカードをテーブルの上に載せなければならない」と言っていた。ワシントンD.C.の保守派シンクタンク、ヘリテージ財団はこのほど、朝中露の核の脅威に対応するため、現在米国が保有している唯一の戦術核兵器とされているB61核爆弾を韓国の烏山や群山に配備する案を提案した。
ワシントン=金隠仲(キム・ウンジュン)特派員