事実上統計改ざん業務をすることになったA氏は、それ以降青瓦台などに送る中間集計値、最終統計値のメール本文に「統計は事実と違う」という意見を添えて送るようになった。監査院が入手したA氏のメールによれば、A氏は2019年5月28日に統計を送る際、「ソウル市松坡区は昨日(送ったメールで)は0%で横ばいだったが、市場に及ぼす影響などを考慮してマイナス0.01%として『再調査』した」と書いている。政権側の要求で松坡区の統計値を0.01ポイント引き下げたことを示す記述だ。
同年6月7日のメールには「今週は15区が横ばいだったが、売却希望価格や成約状況などを総合的に見ると、半分程度の区は事実上プラスだ」と書いている。マンション価格が上がっていないかのように操作したが、実際には価格が上がっているとの指摘だった。
A氏は同年11月29日のメールにも「この2年半でソウル市の変動率は不動産院(の統計に)基づけば11.59%だが、実際には経済正義実践市民連合(経実連、不動産院の統計に疑惑を指摘した市民団体)が主張する32%が実際の状況に近い」と書いた。
A氏は2019年末に他の部署に異動するに際し、それまで自分が送った「意見」をまとめて再度メール受信者に送った。監査院はこの記録を確保したことで、A氏が統計操作を告発してきたことを知った。
A氏は監査院の調査に対し、こうしたメールを残した理由について、「市場の状況を正確に知らせたかった」と答えたとされる。監査院はA氏をはじめとする不動産院の中堅・下級職員を処罰、懲戒してはならないと結論付けた。
A氏の告発メールを受け取った機関のうち、告発内容に反応を示したところがあるかどうかは確認できなかった。むしろ、2020年8月、青瓦台の金尚祚(キム・サンジョ)政策室長(当時)は「積極的に不動産院の優秀な統計を広報しろ。何をやっているんだ。経実連が騒ぐ時には強く反論しろ」と述べていたことが分かった。
金耿必(キム・ギョンピル)記者